【「令和」に刻む東京五輪 気になる人をインタビュー】2020年東京五輪で「気になる人」にスポットを当てた連載「『令和』に刻む東京五輪」の第4回はテコンドー界の“にこるん”が登場だ。女子46キロ級の松井優茄(25=ムジャキフーズ)は2度の全日本選手権優勝を果たすなど実力とルックスを兼ね備える。大目標の東京五輪出場に向けて逆襲を誓う“美人すぎる格闘家”が本紙インタビューに応じ、過酷な練習環境やプライベートを激白した。

 さいたま市内にある公民館でミットを蹴る乾いた音が響き渡る。2015年に女子49キロ級、17年に同46キロ級で全日本を制した松井が声を出しながら汗を流していた。国内トップ級の実力を持ちながらも、2月の全日本選手権はまさかの準決勝敗退。5月の世界選手権(英国)出場を逃し、強化指定選手にも選出されなかった。だが、実は大会数か月前から故障を抱えていたという。

 松井:右足をずっと上げていることが多いので股関節、ヒザ、足首、土踏まず、腰といった箇所のバランスが崩れたり、ずっとやってきた疲労みたいなのが出たのかな。骨折や肉離れとは違って地味なケガなんですよね。でも、ケガがあって思ったように動けなかったけど、勝たなきゃいけなかった。

 現在はマッサージ、はり、電気治療などを続けている。オフはほとんどなく普段の練習に加えて筋力トレーニングに励む。全国を制するレベルの選手であれば、最新の練習施設でたくさんの選手が切磋琢磨する光景が思い浮かぶが、練習生は松井を含めたった5人。特定の“道場”はなく今回の取材場所となった公共施設も週に1度の利用だ。

 松井:冬場に朝練として外で走ったり、夏でも公園で(練習を)やっていたり…。汗だくになるし、超寒いしで大変だった。場所がないのは今でも苦労していること。近所から「うるさい!」とか「子供が寝ているんで」とか言われながら、そうなったらやめて。ミット打ちなんかやったら、さすがにうるさいですよね(笑い)。

 こうした環境下でも黙々と打ち込めるのは、五輪出場を目指し、ともに汗を流す2人の弟(隆弥=22、隆太=19)の存在が大きい。苦しいときには“負けたくない”と弟をライバル視し、発奮材料にする一方、海外遠征では弟の身の回りの世話も欠かさない“姉の顔”も持ち合わせる。

 藤田ニコル(21)似のルックスも注目されている。自宅から一歩でも外に出るときはいつもフルメークを施し、ネイル、美容室にも定期的に通う。強さと同じく女性らしさにもこだわりがある。

 松井:わざわざすっぴんで出掛けなくても…という感じなんです。買い物も好きだし、友達と食事に出掛けることもある。ただ、あまり休みがなくて(秋田)玉川温泉の入浴剤を取り寄せて30分から1時間の半身浴でリフレッシュしています。性格はサバサバしているのかな。周りから「結構冷たい」とか「初対面だと怖い」とか「話しかけづらい」とかいろいろ言われるんですよね。

 所属先のムジャキフーズでは広報課の仕事を手伝っているが、来年の東京五輪出場に向けて出社するのは月に1~2回程度。会社からの応援を力に変えるべく、主戦の46キロ級から五輪種目の49キロ級へ調整している段階だ。ただ五輪に出場できるのは女子は49キロ級、57キロ級、67キロ級、67キロ超級から2階級のみ。そして49キロ級は同学年で全日本選手権3連覇中の山田美諭(25=城北信用金庫)が立ちはだかる。

 松井:美諭はパワーがあるし、試合当日に(体重を)2~3キロ増やしたりしている。私はなかなか増えずに戦うので、その差でも押されると違いを感じます。そこでぶれない体にするため体幹も鍛えています。こんなに大きな大会が自分の国であることはすごいこと。選考会で勝ち上がって東京五輪に出たいです。

 ケガは回復傾向にあるものの、現在も痛みと付き合いながらハードな練習を続けている。心の折れないエンジェルは大舞台で羽ばたけるか。

【テコンドー五輪代表選考法】男子は58キロ級、68キロ級、80キロ級、80キロ超級、女子は49キロ級、57キロ級、67キロ級、67キロ超級と、ともに4階級を実施。日本は開催国枠として認められる男女各2階級(各1人)に代表を派遣する。これらの階級は世界グランプリシリーズ・千葉GP(9月、千葉ポートアリーナ)の後に総合的に判断して決定。代表選手は2020年1月の最終選考会で決まる予定だ。

☆まつい・ゆうな=1994年3月22日生まれ。埼玉・川口市出身。小学2年でテコンドーを始め、日体大3年の2015年に全日本選手権女子49キロ級で初優勝し、17年には46キロ級を制覇。リオデジャネイロ五輪アジア大陸予選に出場した。競技中もメークを欠かさない姿に「美人すぎる格闘家」として話題に。よく使う化粧品はM・A・C。得意技はカット(前蹴り)、左足の蹴り。167センチ、46キロ。