ネットフリックス「愛してるって言っておくね」胸が締めつけられる被害者への思い…有村昆が解説

2022年08月02日 14時00分

有村昆(東スポWeb)
有村昆(東スポWeb)

【ニュースシネマパラダイス】 どうも! 有村昆です。秋葉原無差別殺傷事件を起こした加藤智大死刑囚の刑が執行されました。2008年に東京・秋葉原の歩行者天国にトラックで突っ込み、通行人5人を次々とはね、さらにナイフで17人を刺しました。一連の凶行により7人が死亡、10人が重軽傷を負う痛ましい事件でした。

 死刑が執行されたからといって被害者、遺族にとって事件は終わってないんですね。今回は遺族の視点で描かれたネットフリックスオリジナル作品「愛してるって言っておくね」を紹介します。

 12分のショートフィルムアニメ作品です。冒頭、夫婦が会話もなくご飯を食べている寂しいシーンから始まります。2人の影がスーッと伸びて口ゲンカを始め、夫婦仲が悪いんだなと。なぜこうなってしまったのか、影絵として過去にさかのぼって表現していきます。

 2人は結婚して女の子を授かり、幸せな家庭を築きます。やがて女の子が成長し、いつものように学校に行こうとするんですが、両親の影が「行かないで」と止めようとします。だけど影だから、女の子は通り抜けて学校に行ってしまうんですね。

 そこでシーンが変わって「バーン!」と一発の銃声が鳴り響く。エッ、どういうこと?と思ったら、暗いロッカーの中で携帯電話で打ったと思われる「愛してるって言っておくね」というメッセージが映されます。

 ここまでだとよく分からないですが、だんだんと明らかになっていきます。実はこれ、18年にフロリダの高校で起きた銃乱射事件が題材になっています。生徒と教師合わせて17人の死者が出ました。「愛してるって言っておくね」は娘からのラストメッセージだったと。ほぼセリフがないんですが、セリフなんていりません。影絵で遺族の悲しみと再生の物語を12分間に凝縮しています。「もしあの時、こうしておけば」という描写が影絵で表現され、胸が締め付けられます。

 人の命を奪うことは絶対にあってはならないと思うと同時に、どうしたらテロを起こさせない社会をつくれるのか。加害者もSOSのサインを出してたと思うんですよね。気付くことができれば事件は起きなかったかもしれない。そのSOSを無視しないことが重要なんだと思います。

 ニュースは次々と流れていくけど映画は残り続けます。映画を通して、もう1度考えるきっかけになるのではないでしょうか。残酷な描写がなく子供も見られる作品なので、多くの方にご覧いただきたい作品です。

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。

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