【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。元タレントの坂口杏里さんがご結婚されたということがニュースになっていましたね。電撃婚だったので驚きましたが、さらに驚きだったのが、お相手の方がトランスジェンダーだったことです。昨今、セクシュアリティーの多様性が叫ばれますが、このような選択をした坂口さんを僕は尊重したいですね。

 そこで今回、映画「リリーのすべて」(2016年)を取り上げたいと思います。これは実在の人物リリー・エルベさんを題材とした作品で、原作は「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」です。実はリリーさん、1930年代に世界で初めて性適合手術を受けた方なんですよ。

 肖像画家の女性ゲルダは、同じく画家の夫アイナーをある日冗談で女装させ、モデルとして起用します。最初コスプレ感覚だったアイナーですが、だんだん男性の美意識が遠のき、自分の中の女性性に目覚め始めます。ゲルダがそんな夫を「リリー」という名前でパーティーに連れ出したところ、何と夫は男性にナンパされた挙げ句、キスまで交わしてしまうのです。それを目撃したゲルダが葛藤するのも無理はありません。ですが、やがて夫を女性として受け入れ、リリーは性適合手術に踏み切ります。

 あとは本編に譲りますが、女性になっていく夫を、ゲルダが性別を超えた愛情で包む…。なかなかできることではありません。しかも今よりも偏見にまみれた時代、「神を冒とくしている!」などと非難ごうごうだったことでしょう。大体、人は困難に直面したとき「立ち向かう」「現状を維持する」「逃げる」の3つの選択肢を取りますが、ゲルダとリリーは立ち向かうことを選びました。すごい勇気と言えます。

 でも、これは何もジェンダーに限らないと思うのです。自分という存在と向き合ったとき、3つの選択肢のどれを選ぶのかが人として試されるのではないでしょうか。そういう意味でも、坂口さんは自分なりの生き方を示しました。これまでいろいろな騒動があったかもしれませんが、ぜひ幸せになることを僕はお祈りしています。