【今週の秘蔵フォト】好評を呼んでいるNHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」は27日第35話の平均視聴率が過去最高の17・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。朝ドラが「国民的番組」だった1960年代から80年代までは平均視聴率40~50%を記録する番組が続出。83年の「おしん」は最高視聴率62・9%という怪物的数字を記録した。

 山口果林がヒロイン役を演じた71年の「繭子ひとり」も平均47・4%、最高55・2%と大人気を呼び、山口は一気に国民的スターとなった。同年8月4日付本紙には番組出演中だった当時24歳の山口のインタビューが掲載されている。

 青森・三戸町に生まれ母親が弟を連れて失踪した後、八戸市のおじのリンゴ農園に引き取られ、懸命に生きていく女性を演じた。インタビューでは堂々とたばこをふかしながら「悲しいシーンを悲しく演じたら、かえって悲しくなっちゃう。もっと軽くやったらどうかしら」とディレクターに意見するエピソードも明かされており「いつの間にか原作とは全然ストーリーが変わっちゃったの。繭子の明るい面を強調しようと脚本に書き加えてもらったんです」と語る。若くして肝っ玉の据わった大物だったようだ。

 視聴率が50%を超えても「私は視聴率より繭子と取り組みたい。テレビって芝居を作っている感じがしない。リハーサルが1日しかないんだもん。役者は自分で芝居を作りたいからやってるんじゃないかしら」。当時は俳優座に所属していただけに揺るがない“信念”を感じさせる。

 山口は朝ドラ終了後に俳優座を退団。芥川賞作家の安部公房氏(93年に死去)が主催する「安部公房スタジオ」に入団して看板女優となり、数多くの舞台や映画、ドラマに出演した。2013年には手記「安部公房とわたし」を出版して、ヘアヌードも披露。安部氏と約20年間も愛人関係にあったことを告白。世間に衝撃を与えた。24歳当時のインタビューからも分かるように「激情型」の人生を送った希有な女優だった。