音楽家の坂本龍一(70)が7日発売の文芸誌「新潮」7月号で自伝「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」の連載をスタートさせる。

 第1回のタイトルは「ガンと生きる」。2021年1月に坂本はガンの再発を公表。09年に刊行された自伝「音楽は自由にする」(新潮社)の続編として、坂本みずからが過去の活動と人生を振り返るプロジェクトを開始した。同世代で旧知の仲である編集者・鈴木正文氏が聞き手となり、入院先でのパートナーや友人とのエピソードをはじめ、自身の死生観や創作観の変化についてまで、初めて明かされる事実を赤裸々に語っている。

 連載開始にあたり坂本は「夏目漱石が胃潰瘍で亡くなったのは、彼が49歳のときでした。それと比べたら、仮に最初にガンが見つかった2014年に62歳で死んでいたとしても、ぼくは十分に長生きしたことになる。新たなガンに罹患し、70歳を迎えた今、この先の人生であと何回、満月を見られるかわからないと思いながらも、せっかく生きながらえたのだから、敬愛するバッハやドビュッシーのように最後の瞬間まで音楽を作れたらと願っています。そして、残された時間のなかで、『音楽は自由にする』の続きを書くように、自分の人生を改めて振り返っておこうという気持ちになりました。幸いぼくには、最高の聞き手である鈴木正文さんがいます。鈴木さんを相手に話をしていると楽しくて、病気のことなど忘れ、あっという間に時間が経ってしまう。皆さんにも、ぼくたちのささやかな対話に耳を傾けていただけたら嬉しいです」とコメントを寄せている。