宮沢りえ主演「紙の月」4630万円誤送金事件との共通点を有村昆が解説

2022年05月31日 14時00分

宮沢りえは「紙の月」の好演で第24回東京スポーツ映画大賞主演女優賞を受賞した(東スポWeb)
宮沢りえは「紙の月」の好演で第24回東京スポーツ映画大賞主演女優賞を受賞した(東スポWeb)

【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。山口県阿武町が4630万円を誤送金し、無職の田口翔容疑者が電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されて騒動になっていますね。田口容疑者はすでにネットカジノで使い込んでいると供述しているようですが、決済代行業者3社が計4300万円を返金。事件は複雑な様相を見せています。

 そこで今回は、映画「紙の月」(2014年公開)を取り上げましょう。角田光代さんの同名小説が原作で、主演は宮沢りえさんです。同作で宮沢さんは東京国際映画祭をはじめ、数々の映画賞にも輝きました。

 物語はバブル崩壊直後の1994年。夫と2人暮らしの梅澤梨花(宮沢)は、銀行の契約社員として外回りの仕事をしていました。すでに夫婦関係は冷めきっていましたが、こまやかな気配りと丁寧な仕事ぶりで信頼がありました。

 そんなある日、年下の大学生と出会い、2人は恋に落ちてしまいます。そうなれば口紅の一つも欲しくはなりますが、財布には1万円足りません。そこで顧客から預かった5万円から1万円だけちょろまかし、あとで1万円をすぐに返金。バレることはありませんでしたが、これが地獄の一丁目でした。

 次第に金銭感覚が狂いはじめ、顧客のお金に手を付けることがどんどんエスカレート。横領額は1億円にも上ろうとしていました。上司に疑われても、逆に上司が社内の女性と不倫していることを突き付けて難を逃れようとします。ところが、いつまでもこんなことが続くわけがありません。厳格なベテラン事務員にかぎつけられ…あとは本編をご覧ください!

 いや~、梨花が次第に追い詰められていく描写は真に迫りますね。今回の誤送金のニュースと、銀行員の横領とでは事件の性質が異なりますが、共通点もあります。両者とも、とにかく幸せそうじゃないんですよね。結局、自分が手にしたお金が、人さまのお金だとわかっているからでしょう。ただ私たちも、大なり小なり善悪がせめぎ合う瞬間はあると思うんです。「このぐらいなら、バレないからいいんじゃないか」と。そんな小さな悪が、やがて大きな悪に発展することもあり得ます。

 人間の良心や欲望を考えるという意味で、今作はオススメの一本と言えます。

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。

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