【ニュースシネマパラダイス】 どうも! 有村昆です。牛丼チェーン「吉野家」の常務(当時)による“生娘シャブ漬け発言”は大きなニュースになりましたね。早稲田大学の講座で「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を生娘のうちに牛丼中毒にする」と言い放って大炎上。安い上に、やみつきになるほどおいしいと言いたかったのかもしれませんが、さすがに許されない。実際、常務を解任させられました。

 そこで今回は米映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(2016年)を取り上げたいと思います。これが吉野家騒動を考える上でヒントになるんですよ。

 時代は1954年。一介のセールスマンだったクロックは、ある日マクドナルド兄弟が営んでいた「マクドナルド」に入ります。すると、徹底してムダを排除したサービスのあり方に衝撃を受けてしまいます。商品を紙で包み、コップも紙コップ。食べ終わったら捨てるシステムです。待ち時間もわずか3分。テーブルやイスも少なく、何ならドライブインで外で提供もできる。それまで、レストランといえば、お皿とスプーン、フォークがあり、テーブルで料理が出来上がるまでしばらく待たなければなりませんでした。ところが「マクドナルド」は、とにかくコスパ重視。これに感動したクロックは、兄弟からフランチャイズの権利を買って、またたく間に店舗を増やしてしまいます。やがて経営にも介入しますが、反発を招いたのは強引すぎることです。例えば、問題のある粉状ミルクシェイクの導入を独断で決め、マクドナルド兄弟が契約を理由に撤回を求めても、これを拒否。ほかにもさまざまな問題が生じ、両者は裁判に発展して…。

 吉野家の元常務による、「生娘シャブ漬け」は、発言それ自体も問題ですが、コスパを極限まで高めるために、強引に型にはめようとする考えが透けて見えたところも世間から批判された原因でしょう。他の外食を知る前に、安くておいしいものを押し付けるのは、多様性が尊重される今の時代に合ってませんよね。

 マクドナルドが世界的チェーンになった時代は、クロックの強引な手法も正当化されたかもしれません。でも、当時と今では違います。大量生産、大量消費ではなく、より自分に合ったサービスと値段を選んでいい。そんな時代の流れをくむことができれば、問題発言を避けることができたんじゃないか。そういう思いを巡らせた一本でありました。

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。