アカデミー賞の平手打ち事件 ウィル・スミスに主演映画「ALI アリ」のスピリットが宿っていた?

2022年04月19日 14時00分

ウィル・スミス(東スポWeb)
ウィル・スミス(東スポWeb)

【有村昆のニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。米アカデミー賞授賞式でプレゼンターのクリス・ロックを平手打ちした俳優ウィル・スミスに対し、映画芸術科学アカデミーは8日、今後10年間の授賞式出席を禁止する処分を下しました。そこで本日は、映画を通してこのニュースを考察したいと思います。

 今回取り上げるのは、ウィル・スミス主演「ALI アリ」(2001年)です。あえて本人の作品をチョイスしました。ちなみに、クリスから揶揄(やゆ)された妻のジェイダ・ピンケット・スミスも出演しています。
 映画は、伝説的プロボクサーのモハメド・アリ(本名カシアス・クレイ)の半生を描いています。アリは1960年のローマ五輪でボクシングライトヘビー級金メダルを獲得。その後プロに転向し、通算3回の王座獲得と、19回の防衛に成功しました。一方で、黒人差別とも戦ってきたアフリカ系米国人でもあります。キング牧師やマルコムXが黒人解放運動を進めていた当時、黒人はバスに乗るのにも一番後ろの席と決まっていました。幼いカシアスは「なんでなの?」と疑問に思います。イスラム教に改宗し、名前をモハメド・アリに改めたのも、「クレイ」が奴隷ネームだったからでした。

 そんな中、ベトナム戦争への徴兵を拒否したことが騒動に発展。アリにとってみれば「選挙権すらないほど差別されているのに、何で米国のために命を犠牲にしなければならないのか」と憤りを抑えきれなかったのです。71年に統一世界ヘビー級王者のジョー・フレージャーに挑戦した時、試合中「オレの名前を言ってみろ!」と、クレイではなくアリと呼ばせようと迫ったのも、同じアフリカ系米国人のフレージャーに「オレは白人に屈しない」という意味が込められていました。

 そんな激しい黒人差別に毅然と立ち上がったアリ。それを演じたウィルとしては、愛する妻をバカにされて、立ち上がらないわけにはいかなかったのではないか、と僕は思うのです。もちろん、暴力は絶対にダメですが、どこかアリのスピリットがウィルに宿っていたのかもしれません。また、クリス・ロックも黒人なので問題が見えにくくなっている側面もあるように思えます。もし彼が白人だったらどうでしょう。これほどの処分がウィルに出たのかどうか…。

 そういう意味でも「アリ」は、いろいろ考えさせられる一本と言えます。

 ☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。 

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