11日のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で、劇中に加山雄三主演の映画「ハワイの若大将」のチケットが映し出される場面があった。昨年末には、三船敏郎の主演で加山も出た黒澤明監督作品「椿三十郎」のチケットも登場しており、黒澤作品で好演した2人の映画が取り上げられた形となった。

 3世代の女性の100年にわたるファミリーストーリーを描く「カムカムエヴリバディ」。現在は深津絵里演じる2代目ヒロイン「るい」のパートで、第11週に入った今週は1962―63年の設定で進行する。

 この日は、ジャズトランペット奏者錠一郎(オダギリジョー)に思いを寄せるベリー(市川実日子)が「若大将」の前売り券2枚を出し、「一緒に見に行かへん?」と誘った。錠一郎は「大学生の青春とか、僕はよう分からんから」と乗り気薄で、ベリーの押しをかわしていた。

 この映画は加山の代名詞「若大将」を冠したシリーズの第4作で、63年に公開された。年間入場者でみた日本映画の最盛期は58年。「カムカム」昨年末の放送では、るいが男性に誘われ「椿三十郎」(62年)を見に行くシーンがあり、映画が「娯楽の王様」でデートの定番だった時代背景を浮かび上がらせる小道具となっていた。

 黒澤、成瀬巳喜男ら名匠の作品にも数多く出演した加山。黒澤作品「赤ひげ」(65年)では、三船と師弟のような関係を演じている。「カムカム」の映画チケット連発は、映画黄金時代の主役たちへのオマージュか。