英歌手エルトン・ジョンが親しい友人だったダイアナ元妃に捧げた追悼曲「キャンドル・イン・ザ・ウインド」を葬儀で歌うことができたのは、バッキンガム宮殿が世間の王室批判の流れを変えるために効果的だと判断して許可していたことが分かった。

 英スカイ・ニュースが新たに入手した英国立公文書館の資料によると、英王室は当初、同曲の歌詞が「感傷的過ぎる」として難色を示した。だが、当時のウェストミンスター首席司祭はエルトンが同曲を歌うことで「想像力豊かで寛大な王室の好印象につながる」と書簡で伝えたことにより実現したという。

 ダイアナ妃がパリでの交通事故により急逝したのは1997年8月31日。前年すでにチャールズ皇太子と離婚していたとはいえ、元妃の悲劇の死に対して、エリザベス女王を含む王室の対応は冷たく、弔意を示していないとして国民に不快感が広がった。しかも、離婚原因はチャールズ皇太子のカミラ夫人との不倫関係だったことから世間の批判の矛先は皇太子に向けられた。

 そんな中、同年9月6日にウェストミンスター寺院でダイアナ元妃の準国葬「王室国民葬」が執り行われ、エルトンが約2000人の会葬者を前に「キャンドル・イン・ザ・ウインド」を歌い上げた。その映像は世界中に放送され、人々の深い悲しみを誘った。

 同曲はもともとエルトンが1973年に米女優マリリン・モンローに捧げた楽曲で、当時の邦題は「風の中の火のように(孤独な歌手、ノーマ・ジーン)」。エルトンはダイアナ元妃の死去に際し、急きょ歌詞を書き直した。このリメイク版「キャンドル・イン・ザ・ウインド」はその後14週間にわたり、ビルボードチャート1位を記録した。