臭いものにフタなのか――。学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(当時54)が、佐川宣寿元国税庁長官(64)の指示で決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、妻の雅子さん(50)が国と佐川氏に計約1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の進行協議(非公開)が15日、大阪地裁で開かれ、国側は原告側の請求を全面的に認める「認諾」の手続きを取り、裁判が終結した。

 国側は地裁に提出した書面で、赤木さんの自殺の原因を「決裁文書の改ざん指示への対応を含め、さまざまな業務に忙殺され、過剰な負荷が継続したことにより、自死に至った」と説明。「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではない」として認諾するとした。

 国が全面的に主張を認めるとあれば、原告にとっては喜ばしいことと受け取れる。実際に国の認諾が報じられると、雅子さんのもとには「おめでとう」「良かったね」といった連絡が寄せられた。しかし、原告側代理人によると、認諾とは請求を認めているだけで、事実関係を認める「権利自白」とは異なるという。

 そもそも、1億円を超える損害賠償を請求したのは、国が認諾することで真相にフタをするのを避けるのが狙いだったが、国側の代理人は協議で突然、「認諾する」と主張。事前の通告はなく、裁判所も寝耳に水の話だった。

 それだけに、原告側代理人は「信義則に反する。あまりにも不意打ちで不誠実で極めて卑劣だ。『お金を払えばいいんでしょ?』という対応を国がしたことに強く抗議した」「これまでの訴訟で事実が解明されつつあったからこそ、都合の悪い真実にフタをするために認諾した。誰が見ても、それ以外理解できない」と怒りを隠さない。雅子さんも「ふざけるなと思った。私はなぜ夫が死ななければいけなかったのかを知りたい。お金を払えば済む問題じゃない」と胸中を吐露した。

 国の認諾を受け、訴訟は佐川氏との裁判に舞台を移す。雅子さんは「夫にちゃんと顔向けできるように、これからも方法を考えながらやっていきたい」と、今後も夫の死の真相を求め続けるつもりだ。