センダイガールズ・橋本千紘の夢 仙台そして女子プロレス団体から初の金メダリストを!

2021年11月21日 10時00分

キッズたちにレスリングの基本の構えを教える橋本(東スポWeb)
キッズたちにレスリングの基本の構えを教える橋本(東スポWeb)

【直撃!エモPeople】仙台から初のレスリング金メダリストを――。女子プロレス「センダイガールズ(仙女)」のワールド王者で“怪物”こと橋本千紘(29)が本格的なアマチュア育成に燃えている。仙女は10月13日からキッズレスリング「仙女スポーツレスリングクラブ」をスタート。橋本がヘッドコーチを務め、幼児から小学6年生までを対象に生徒を公募している。夢は大きく仙台と女子プロ団体から初のレスリング金メダリストを出すことだ。

 プロレス団体がレスリング選手を養成するシステムは新日本プロレスの「闘魂クラブ」が有名だが、女子プロではほぼ前例がない。対象は幼児から小学6年生の男女で、すでに5人が入門。下は男子の幼稚園児、上は小4の女子が、週1回、道場で汗を流している。

「生徒は全員宮城の子で、小2の子は福島から来ています。最初は遊び感覚でマットに慣れることと、基本の構えですね。ブリッジは始めていますが、タックルなどコンタクトは基礎練習を学んでから1か月ほど先になります」と橋本は語った。

 社長で“女子プロ界の横綱”こと里村明衣子(42)はWWE NXT・UK女子王者として英国移住中。エースとしての重責を果たす一方、あえて新しい試みに挑んでいる。実はレスリング選手の養成は、長年の橋本の夢でもあったからだ。

「私はキッズレスリング出身ではなかったけどレスリングをやって人間的に成長したと思う。仙女入門の時には里村さんに『(中3の)初対面と人柄がすっかり変わった』と言われた。試合に勝つという達成感、うれしさは人間を成長させる。キッズからそれを覚えれば心は強くなり人間形成にもつながると思う。だから自分が現役で元気なうちに指導者になりたいと思った」

 中3の夏に仙女のオーディションを受けるも、当時の新崎人生社長から「卒業するまで柔道かレスリングをやりなさい」と助言され、地元・福井市の「福井レスリングクラブ」に入門。これが大きな転機となる。

 レスリングを始めて2か月後に全日本女子オープン選手権の中学生の部で優勝。名門・安部学院高から勧誘を受けて入学。レスリングの魅力にとりつかれ、プロレスラーになるという目標はいったん封印。キッカケは世界レベルの大会での勝利だった。高1でいきなりウズベキスタンでのアジア・カデット選手権で2位、翌年のインド大会で優勝。高校2、3年時には全国女子レスリング大会2連覇を果たすと、目標は五輪にシフトチェンジ。高校卒業後は名門・日大に進学。五輪出場こそかなわなかったが、世界大学選手権銅メダル、全日本選手権では5回の銅メダル獲得の実績を残した。

 生徒はまだ少ないが思い描くプランもある。

「最終的には20人ぐらいに増やして、道場を改造してレスリング専用のマットも設置したい。1年後には他の県に遠征して大会に選手を出場させたいです。中学生になっても、練習は続けてもらう。ただ高校で本格的にやるとなると1人で続けていくのは限界があるし、毎日、高校で練習をやらないと難しいですから」
 高校進学後はスクールを“卒業”して本格的にレスリングに取り組んでほしいという。

「男子は仙台市内に強豪校がいくつかあるし、女子なら私が出た安部学院に進んでほしい。いずれ仙女出身の金メダリストが出てくれれば最高ですよね」と目を輝かせた。

 プロレスラーではなく、あくまで五輪を目指すアスリートとして育てる方針。「キッズの大会は宮城県内にはないので県外に行くしかない。将来的には『仙女カップ』みたいな大会を設立するのも面白いと思う」と橋本は夢を語る。

 高校の時は副主将、大学時代は女子主将で指導力は備えている。それでも「全員個性は違うし子供を教えるのは本当に難しい。レスリング=つらいとは思ってほしくない。練習は確かにつらいけど、苦しさを乗り越えて勝つ喜びを覚えてほしい」と指導者としての覚悟も語った。年齢差、個人の運動能力の差という問題もある。それでも「仙女で何もできない子を一から育てプロにしたこともあり、それは自信になった。逆に言えば大人を教えるほうが難しいですからね。子供のほうが吸収力があるし、素直だしやりがいはある」と自信は揺るがない。宮城県出身の金メダリストは、重量挙げの三宅義信(1964年東京、68年メキシコ五輪)、冬季ではフィギュアスケートの荒川静香(2006年トリノ五輪)、羽生結弦(14年ソチ、18年平昌五輪)らが歴史に名を刻んでいるが、レスリングではまだ金メダリストを出していない。

「今の子供たちが五輪を狙うとすれば…2032年のブリスベン五輪ぐらいですか。遠い先の話になりますが、私も子供たちも夢を追い続けることができる。プロを続ける上でも励みになる」と目を輝かせた。本業のプロレスでは旗揚げ15周年記念大会(28日、仙台サンプラザ)メインで、宿敵でマーベラスのエース・彩羽匠(28)とワールド王座V3戦を行う。「王者=橋本とは思われるようになったけど、仙女=橋本までには至っていない。今回がそのチャンス。完全な勝ち方で、来年以降は私が先頭に立ち引っ張っていく」と橋本。スクールでは繊細かつ厳しい指導者として、プロレスでは完全無欠の怪物王者を目指す。

 ☆はしもと・ちひろ 1992年7月1日、福井県坂井市出身。中3で仙女の入門テストで合格も新崎人生社長の勧めで福井レスリングクラブに入門。名門・安部学院高校を経て日大レスリング部へ進み女子主将を務める。世界大学選手権銅メダルなど数々の国際大会で活躍。卒業後の2015年に仙女入門。同年10月11日仙台大会で神取忍と組み豊田真奈美、岩田美香組戦でデビュー。16年10月16日、里村明衣子からセンダイワールド王座奪取。同年の東京スポーツ新聞社制定「プロレス大賞」新人賞を獲得。現在、ワールド王座(5回目)を保持。28日仙台大会で彩羽匠とのV3戦を控える。158センチ、88キロ。得意技・オブライト(原爆固め)。

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