東京都の新型コロナウイルスの新たな感染者は4日、過去最多の4166人となった。全国でも過去最多を更新する1万4207人の新規感染者が報告された。感染者の急増により、都が自宅療養者に提供する食料の遅配や在庫が底を突く事態になっている。政府は入院対象者を重症者に限定する方針だが早くも課題が見えている。医療ジャーナリストの松井宏夫氏が「軽症者ほどホテル療養すべき」と緊急提言した。

 コロナで自宅療養中のある男性のもとに先日、都から1週間分の食料が届いた。2リットルの水6本と段ボール2箱にカップラーメン、パックのごはん、レトルトのカレー、親子丼、スパゲティ、うどんなど。さらに、お菓子やゼリーなども入っており、かなり豊富な品ぞろえだ。しかし、一つ大きな問題があったという。

「食料が届いたのが陽性の診断を受けてから1週間後だったんです」。また、食料には「新型コロナウイルス感染症自宅療養者向けハンドブック」が同封されていた。つまり、ハンドブックを見たのも1週間後というわけだ。

 松井氏は「ハンドブックは陽性との診断が出た時に渡すべきです」と苦言を呈した。自宅療養から1週間後に食料が届いたことについても「発症していても自分一人でマスクをして出て行って、コンビニやスーパーに行くことになる。『外出してもいいよ』って言っているようなものです」。しかし、今後は自宅療養者に食料が届く保証はない。感染者急増により都の在庫が底を突きそうだからだ。

 それでも、松井氏が「療養中に免疫を上げていくことは大事だと思いますね」と話すように、特効薬がないため、食事から栄養を摂取するしかない。しかし、カップラーメン…。

 コロナの特徴として味覚障害が挙げられるが、「全部の味が分からなくなるわけじゃないんです。特定の味が分からないという形になりますので、味覚がまったくゼロというわけではないですね。治っても味覚障害が残るケースもある。一生残るとかはないんですけど、味覚障害が3か月、6か月と続くケースはあります。その間は付き合っていかないといけない」と松井氏。

 高熱が出ていると食欲がなくなる危険性もある。松井氏は「食事が取れない状況になったら、かなり症状が進んでいるので、入院したほうがいいでしょうね。その段階でも入院させないとなると困るんですけどね」と続ける。

 菅義偉首相は4日夕、重症者以外の入院を制限する政府方針に関し、撤回を求める与党の要求に対し「撤回しない」と拒否している。

 これに松井氏は「前は都立広尾病院を新型コロナ感染症の人たちの病院にするようなことを言っていたけど、全然なってませんよね。なのに入院させないなどと言い始めている。ちょっとおかしいなと思う。日本って病床が空いているんだから、一つの病院に移動してもらって対応はできると思う。やるって言ってやらないんだから」と指摘する。

 また、松井氏は「軽症者こそホテル療養するべき」と提言する。

「軽症で自宅療養となっても、家族がいた場合は家族に感染させちゃったら何の意味もないですよ。取りあえず軽症の場合はホテル療養してもらう。それから自宅療養などを考えるべきです。重症者、中等症については、大きな病院で『ここの病院は全員コロナの患者さんです』とするべきだと思いますね。東京都の場合は少なくとも3つの大病院でやるべきだと思います」

 前出の男性が「一人暮らしなので、軽症とはいえ、いつ症状が悪化するんじゃないかという不安が常にありました」と言うように、新型コロナは容体が急変し、死亡する可能性がある。同居者がいないと、呼吸困難になった時に病院に連絡できるか不安が募る。

 松井氏は「保健所も電話ではなく、訪問診療のように1日1回はちゃんと会っていくべきですよね。それが先進国の医療がやるべきことだと思います」と訴えた。