東京都の新型コロナウイルスの新たな感染者は3日、3709人となり感染拡大が止まらない。そんな中、政府は新型コロナウイルス患者の入院対象を重症者らに限定する方針だ。若い世代にとっては死に至る病気ではないと思われているが、単身者の自宅療養には危険が潜んでいる。自宅療養を経験した都内在住の30代男性がその危険性を語った。

 男性は先月の夜に頭痛と倦怠感を抱き、翌朝、体調は戻っていたが、念のために病院に行きPCR検査を受けると、陽性の診断を受けた。知らないうちに新型コロナに感染し、発症したのだった。

「熱も37・1度ぐらいで軽い風邪のような症状。コロナと言われても実感がありませんでした。いわゆる『軽症』の診断でした」

 病院から「外出はしないでください。保健所からの指示に従ってください」と言われ、そのまま帰宅。夜になっても保健所からの連絡はなく、電話をかけても、つながらなかったという。翌日も連絡がなかった。

 保健所の連絡があったのは2日後。その際に「宿泊療養しますか?」と問われたが、「軽症だったし、本当に必要な人のために」と思い自宅療養を選択。保健所からは「外出できないので1週間分の食料を送る。食料が届くのは早くて5日後」と伝えられた。

 しかし、男性は自宅療養の選択を後悔することになる。軽症と軽く考えていたが、倦怠感、頭痛、体の痛みに襲われた。熱も朝に下がったと思ったら夜には戻ることの繰り返し。体調がよくなるどころか、咳、肺の痛み、じんましんなどの症状が次々に現れた。「軽症とはいえ、いつ症状が悪化するんじゃないかという不安が常にありました」と言う。

 新型コロナの怖いところは、容体が急変し、死亡する可能性があることだ。同居者がいないので、もし急変し、呼吸困難になったとしたら、病院に連絡できるか不安が募る。単身者の自宅療養では、ここをクリアできなければ、救える命も救えなくなってしまう。

 薬を処方してもらうにも問題があったそうだ。

「咳止めを処方してもらおうと思ったんですが、『受け取りには家族の方でお願いします』と言われ、がくぜんとしました」

 コロナを発症しているため外出はできない。それなのに家族が近くにいないと薬を受け取ることさえできないのだ。また、前述の保健所からの食料は5日では届かなかった。

「私の場合は食料のストックがあったのと知り合いに届けてもらったので、何とかなりました。でも、ストックのない人や頼れる人がいない人は、発症したまま自分で買いに行くことになると思います。そういう人がいて、感染を広げてると思うと怖いですね」

 さらに、メンタルもボロボロになった。「いつ症状が悪化するのかという不安もそうなんですが、感染したことに対する後悔で落ち込むんです。私の場合は濃厚接触者がいなかったので救われましたが、もし人に感染させていたらと思うと、罪悪感に耐えられなくなります。心配をかけたくないので、遠くに住んでいる親にも言えませんでした」と語る。

「夏場で暑くてマスクをズラしたりすることが増えていた部分はある」と振り返るが、感染経路についてはまったく思い当たる節がないという。

 単身者はいつ感染・発症し、自宅療養になるか分からないだけに準備が必要だ。また、今後は高齢者のほか、呼吸困難や肺炎の症状がある人も自宅療養となる可能性があり、容体急変への対応が焦点となる。

 男性は「頼れる人が近くに住んでいない単身者には、食料品、解熱剤、咳止め、経口補水液、冷却シートなどを買い置きしておくことを勧めます。保健所や医療関係の不備に文句を言ってるのではありません。よくやってくれていると思います。ただ、国が入院対象を重症者らに限定することが無謀なのです。自分で守るしかありません」と話している。