もう逃がさない――。東京五輪の開幕直前の18日、大会組織委員会や政府などは国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)を迎賓館(東京・港区)へ招いて約40人参加の歓迎会を開催した。緊急事態宣言下、不要不急の〝バッハパーティー〟に国民の怒りがピークに達する中、反五輪派が最後の〝賭け〟に出ている。


 組織委の橋本聖子会長が主催したIOC関係者の歓迎会には、菅義偉首相や小池百合子都知事、組織委前会長の森喜朗氏ら約40人が出席。飲食こそ取りやめとなったものの、緊急事態宣言下での大人数の会合には批判が噴出していた。

 歓迎会の開始とほぼ同時刻から、迎賓館前には約35人の抗議デモ隊が集結。50人を超える警察官により厳戒な警備体制が敷かれ、皮肉にも歓迎会出席人数をはるかに超える「密」な状態の中で「不要不急のパーティーをやめろ」「私たちは歓迎しない」「ふざけたパーティーを中止しろ」「五輪は中止」といった反対の声が上がった。

 そんな外の騒がしさをよそに、歓迎会開始から約1時間半後の午後7時半ごろにはバッハ会長を乗せた車がさっそうと迎賓館を後にした。続々と帰路に就いた出席者の中には、バスの中から報道陣にのん気に手を振るIOC関係者も…。日本国内の反応との乖離(かいり)をうかがわせる一幕だった。

 前日17日にも、バッハ会長が宿泊する都内一流ホテル前でデモがあったばかり。バッハ会長が以前に「言いたいことがあるなら手紙をください」と発言したことを受け、反対派は各自が「東京オリンピックを中止してください」「カネよりも命を大切にしてください」などとしたためた手紙を持参。抗議行動を主導した杉原浩司さん(55)は手紙を集約した「嘆願書」を組織委に手渡し、バッハ会長に届けるように要請した。

 そこで杉原さんを直撃。今回の行動について「コロナ感染を確実に拡大させ、多くの命を奪うことが明らかな東京オリパラの強行を止められない日本の政治、社会とは何なのか。私はそれを見過ごすような生き方だけはしたくない。そう思って抗議行動を呼びかけました。〝どうせ開催される〟ではなく〝開催させてはならない〟からです」と説明した。

 今後については「組織委担当者は〝渡すよう努力する〟と明言しました。当然のことであり、直ちに実行してほしいと思います。それに併せて、手紙を読んだバッハ会長のコメントを確認するよう伝えました。23日の開会式までにバッハ会長の見解を確認した上で、私たちの五輪中止の嘆願をのまないなら、さらなる行動を準備したいと考えています」と目を光らせている。

 歓迎会に出席したバッハ会長に嘆願書は届いているのか。杉原さんは「まだ時間はあります。強行開催に反対する多くの皆さんに、その思いを形にしていただくように、強く呼びかけたいと思います」と、最後まで中止を訴えるという。

 東京五輪はIOC関係者ののん気な姿と対照的に、不穏なムードが漂っている。