フランス・カンヌで6日に開幕した「第74回カンヌ国際映画祭」が17日、無事閉幕した。同映画祭は昨年、新型コロナウイルス禍のため通常開催できず、公式セレクション56本を発表するにとどめた。それだけに今年のコロナ対策は、非常に厳格に行われた。日本でも東京五輪・パラリンピックが行われるが、カンヌのコロナ対策はどんなものだったのか?

 カンヌ国際映画祭は例年、5月に行われる。昨年は通常開催できなかったが、今年は時期を7月に変更し、従来の形式で開催された。

 今年は同映画祭に参加する報道陣はもちろん、監督や俳優などの出席者も、コロナ陰性を証明しないと中に入れなかった。新型コロナの陰性証明書か、EU住民の場合はワクチンパスポート(ワクチン2回接種が完了したことを証明するもの)を見せることが義務づけられたのだ。

 しかも陰性証明は、検査が48時間以内のものではないと不可。そのため参加者は48時間に1度、PCR検査を受ける必要がある。会場のすぐ近くにPCR検査センターが設置されていて、その結果をメールまたは書類で受け取る。ちなみにこのセンターでは、外国人でも無料で検査が受けられた。

 メールが来ると、フランスで推奨されている「Anti Covid」というアプリに陰性証明を取り込めるようになっている。日本におけるCOCOAのようなものだが、普及率が全く違い、フランスではほとんどの人が利用している。この「Anti Covid」に取り込んだ陰性証明のQRコードをスマホで表示し、ガードマンがQRコードリーダーで読み込んで、ようやく中に入れるという厳重なチェックが日々、行われた。

 検査センターでは、午前8時から午後9時まで検査が受けられ、インターネットで予約する必要がある。ただ検査の結果が出るまでに5~6時間かかるため、午前8時に受けても結果が出るのは午後1時ごろ。それでも陰性証明は午前8時からスタートとなるので、次の検査は43時間以内に受けないと間に合わなくなる。映画祭にフルに参加した場合、10回ほど検査を受ける必要があった。

 こういったチェックは、もちろん大スターであっても受けなければならない。ちなみにフランスの大人気女優で、ハリウッドでも活躍するレア・セドゥは出演作品が4本もあったが、カンヌへの出発前にパリで検査したところ、陽性反応が出た。ワクチン接種も完了していて無症状だったというが、映画祭にはもちろん出席できなかった。

 ちなみに検査センターでは毎日2000~3000人ほどが検査して、1日に3人くらいの陽性者が出ていたいう。

 また建物の中ではマスクの着用は必須。日本と違い、欧米ではマスクを着用している人は少ないが、映画の上映中などは大物監督も大スターもマスクを着用していた。

 屋外でも、レッドカーペットでは前の道路が封鎖され、そこから一般のファンがスターの到着を見られるゾーンがあるが、そこもマスクは必須。ただ実際には外している人も多かった。

 フランスをはじめヨーロッパはワクチン接種が進んでいるおかげで、カンヌ映画祭もクラスターなどを起こすことなく無事に終了したが、ワクチン接種もCOCOAの普及も遅れている日本。果たして東京五輪はどうなることやら…。