ダブルパンチを食らったのは――。「あいちトリエンナーレ2019」で抗議が殺到し、一時中断された企画展「表現の不自由展・その後」の一部作品などを展示する「表現の不自由展かんさい」が16日、大阪市の大阪府立労働センター「エル・おおさか」(18日まで)で開幕した。

 同展は、抗議が相次ぎ利用者らの安全を確保できないとして、会場の指定管理者が6月25日付で利用許可を取り消したが、地裁、高裁が利用を認め、開催に至った。最高裁もこの日、会場利用を認める決定をした。

 慰安婦を象徴する「平和の少女像」や昭和天皇の肖像を使った創作物が燃える映像作品も展示されており、賛成派と反対派が会場周辺で一触即発の状態に。不測の事態に備え、多数の警察官が目を光らせる中、反対派は拡声器で抗議し、街宣車が爆音を響かせながら周回。「不敬や」「ご先祖さんの遺影持ってきて焼いてみ。どこが芸術や。芸術の名を汚すな」と叫ぶと、会場前に陣取った賛成派は「やかましい」「表現の自由を守れ」などのプラカードで応戦した。

 お互いが言い分を主張する中、双方から批判を浴びてしまったのが大阪府の吉村洋文知事だ。

 同展を“反日プロパガンダ”と指摘し、施設管理者の利用許可取り消しに賛意を示した吉村氏には、賛成派から「憲法に保障されている表現や集会の自由を脅かす知事はいらん」「ホンマに弁護士なん?」と批判が寄せられている。

 一方で、反対派からは支持を集めそうなものだが、「吉村。何しとんのや、お前は。大村(秀章愛知県)知事に『とんでもない展示会をやってる』という批判をしておきながら、ここで同じことされとるやないか」「政治的パフォーマンスやろ」などと罵倒された。

 なお、この日、会場にペーパーナイフのようなものが郵便で届いた。6月から予定された東京での展示は、抗議を受けて延期に。名古屋市の施設でも今月6日に始まったが、郵送物から破裂音がする事件が起き会期途中で中止に追い込まれた。期間中に一波乱あるかもしれない。