プロレス業界で伝説となっている新日本プロレス「熊本旅館破壊事件」で新事実が明らかになった。

 この事件は1987年1月23日、巡業先の熊本県水俣市の某旅館で起きた。当時、新日本プロレスと〝格闘王〟前田日明率いるUWFはバチバチの対立構図にあり、見かねた新日本の坂口征二現相談役が両者の親睦を深めようと宴会を企画。ところが酒が進むうちにあちこちで乱闘が始まり、最終的に旅館を丸ごと1軒潰すような被害を出した。

 この一件は2016年にフリーアナウンサーの古舘伊知郎がフジテレビ系「人志松本のすべらない話」で明かしたことでも話題に。レスラーの吐しゃ物が階段をつたって下階に流れ込むサマを「地獄絵図」と形容した。

 事件がファンの興味をそそる理由はほかにもある。参加レスラーによって証言がまるで違い、何が真実か全くわからないのだ。ネット上ではまとめサイトも乱立。前出古舘で言えば、後日、自分はその場におらず、他者の話を聞いているうちに自身も参加した気になっていたと明かし、ユーチューブチャンネルで謝罪している。

 そんななか、事件当日の記憶を鮮明に覚えている人物がいた。当時の東スポプロレス担当記者のY氏だ。このほど、同じく宴会に参加していた蝶野正洋と対談を行い、新証言を連発。例えば、会場の席次第についても長テーブルを想像しがちだが、実は結婚式のような丸テーブルがいくつも並び、中央に猪木と坂口が鎮座。プロレス記者に加え、リング設営スタッフも参加していたことが分かった。

 事件のハイライトの一つである武藤敬司と前田の殴り合いも、蝶野は「最後は高田(延彦)さんが前田さんを羽交い絞めにして武藤さんが1発殴った。そこでみんな笑って盛り上がった」と和やかムードを強調していたが、Y氏によると「前田さんが武藤さんに馬乗りになって、バッカ~ン、バッカ~ンと殴り出して。(場が)凍りついたよ。1発殴られるたびに武藤さんの顔が変形していった」と明かした。

 武藤がやられているのを見て激怒したのが坂口で、Y氏いわく「前田さんのところに突進していった。その時、丸テーブルが(衝撃で)1回転した」。その後、2人をはがした坂口は寝そべり「関節どこでも良いから取ってみぃ」と〝威嚇〟したという。

 さらに現場に「いなかった」と訂正したはずの古舘についても、Y氏は「いた。僕は見ている。猪木さんの席で話していた」と重大証言。これには蝶野も「ウソっ! 本当に!?」と驚くほかない。

 このほか、9日夜に公開された「蝶野正洋チャンネル」と「東スポチャンネル」の動画では、旅館を潰した主犯格・後藤達俊の狂気、実は新日本とUWFの対立構図ではなく、猪木派と坂口派の争いだったこと、ドン荒川による武藤〝調略説〟などについても検証している。

 Y氏の新証言で謎は深まるばかり。ただ一つ言えるのは、時代が時代なら参加レスラーはもれなく器物破損、傷害、営業妨害で現行犯逮捕されているということだけだ。