不安は募るばかりだ。東京五輪の開幕まで残り3週間となり、1日から海外選手団の入国が本格化している。この日はドイツやギリシャ、米国の選手団など100人以上が来日。4日までに約400人が入国する見通しだ。その一方で、医療関係者は新型コロナウイルスの水際対策の甘さを指摘。このまま〝ザル〟の状況が続けば、国内の感染拡大に拍車がかかることになりそうだ。

 ついに海外選手団の〝来日ラッシュ〟が始まった。羽田空港の国際線到着ロビー前には、各国の選手団が続々と姿を見せた。同空港では一般利用者と動線を分けた上で、大会関係者専用の検査スペースを設けるなどしながら、新型コロナの水際対策を行っている。

 この日からコロナ対策に関する選手らの行動ルールを定めた「プレーブック」も適用される。ルール違反発覚時には「参加資格剥奪」「国外退去の強制措置」等の厳しい処罰が科されると明記。懲戒委員会の裁定によっては、メダル剥奪の可能性もあるという。

 ところが、医療関係者からは水際対策の甘さが指摘されている。空港検疫では五輪選手に限らず、海外から日本に入国した際には抗原検査を受ける。だ液を採取してウイルス量を調べる方法だが、PCR検査より精度が低いとされており、ある医療関係者は「なんで抗原検査なのかが疑問」と首をかしげた。

 実際、ウガンダ選手団は先月19日に成田空港に到着。9人全員がワクチン接種済みで陰性証明書を持っていたが、1人が陽性判定を受けて隔離された。残りの8人は濃厚接触者が特定されないまま移動し、大阪の合宿地到着後に新たに1人の陽性が判明。結果的に空港検疫をすり抜けた格好となった。このケースを見る限り、水際対策に穴があると言われても仕方がない。

 前出関係者は「ウガンダ選手団のニュースを見ていると、どうしても空港では(コロナを)防ぎ切れないと思う。抗原検査しかやっていないし、たとえ陰性だったとしても、後々陽性だと判明した方がすでに出ている。選手たちが入ってくるとなれば(コロナを)防ぎ切れないのは分かっている。医療現場への影響も危惧されるし、たくさんの外国人が(日本に)入ってくることが不安」と表情を曇らせた。

 多くの選手団が専用のバスなどで各地のホストタウンに散らばるため、同様の事態が複数発生した場合、さらなる混乱も予想される。ただでさえ、国内の感染は再拡大の傾向にあることは明らか。東京の1日の新規感染者数は673人で、前週の同じ曜日と比べて12日連続で上回った。

 東京都の新型コロナの感染状況を分析する「モニタリング会議」では感染力の強い変異ウイルスに入れ替わった場合、開幕直前の2週間後には1日あたりの新規感染者数が2000人を超えると試算した。このまま水際対策が〝ザル〟の状況が続けば、感染拡大に拍車をかけることになりかねない。本番が刻一刻と近づく中、不安は消えないどころか広がる一方だ。