招かれざる客ということか。東京五輪開幕まで残り1か月を切った。新型コロナウイルスは再拡大の傾向を見せており、「第5波」の本格的な到来も危惧されている。今も不要不急の遠出はご法度にもかかわらず、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)は7月16日に被爆地の広島訪問を画策。〝ぼったくり男爵〟の身勝手な行動には、地元広島の住民などからも批判の声が相次いでいる。

 かねてバッハ会長は「ノーベル平和賞」の受賞を最終目標にしているとささやかれており、被爆地の広島訪問にも並々ならぬ意欲を燃やしてきた。当初は5月の平和記念公園での聖火リレーに合わせて来日を計画。東京都内などで緊急事態宣言が延長されたため来日を断念したが、これで〝ぼったくり男爵〟があきらめるはずもない。

 東京五輪開幕前の来日に合わせて、再び広島を訪れる方向で調整が進められているという。バッハ会長が訪問を希望する7月16日は国連で採択された「五輪休戦決議」の期間が始まる日。同決議では「世界の人々の多様性と調和」への関心を高め「未来に継承する」と強調。バッハ会長も五輪運動の柱である平和希求の取り組みを訴えるとみられている。

 平常時であれば称賛を集めたかもしれないが、今はコロナ禍のさなか。ネット上では批判の声が上がっているほか、ある元オリンピアンは「実際のところ『平和の祭典』というアピールにはならないと思う。コロナがあるから五輪をしなかったという方が評価になりそうだけどね。バッハ会長が動くことで多くの人(関係者)が動く。どういうことだよと思う」と苦言を呈した。

 地元の広島からも不満の声が相次いでいる。ある住民は「正直(広島県への訪問は)諦めたと思っていた。逆に『こんなに叩かれているバッハ会長ってどんな人なんだろう』というのが気になる。人が集まるのも目に見えているし、県外からも人が来る可能性がある。それらを加味したら来なくていいのに」と〝拒否反応〟を示した。

 バッハ会長と言えば、5月に「(五輪開催のために)我々は犠牲を払わねばならない」と発言。日本国民の猛反発を招き、悪い意味でも「時の人」となった。広島訪問時には同行する関係者に加え、大勢のメディアや見物客が集結することも予想される。住民にとっては迷惑以外の何物でもないというわけだ。コロナ禍の状況を考慮せず、広島訪問ありきの行動は非難を浴びそうだ。