東京五輪・パラリンピックの競技会場がある自治体の小中学校の生徒に現地観戦の機会を設ける「学校連携観戦プログラム」を巡り、都内の自治体から不満の声が漏れている。

 東京都教育委員会は「共生・共助社会の実現」を目標に、五輪・パラリンピックと連携した教育を実施。会場での観戦はその集大成となるイベントだったが、ある区の関係者は「新型コロナウイルスの感染症(対策)をこんなふうにしていますよとか、そういう具体的な対策案が都教委から届いていない」と困惑気味に明かした。

 この不十分な対応に、一部の自治体が反発。都教委からまだ正式な通達は行き渡っていないが、目黒区は22日に不参加を表明した。都教委は交通手段として公共交通機関の利用を指定していることから、同区内の学校長らが児童や生徒への安全対策に懸念を示していたという。

 目黒区ではそれらの意見を踏まえ、総合的に判断。同区教委の担当者は「公共交通機関を使っての移動は、感染症対策の観点や、熱中症対策の観点から、不安を拭うことができない。児童・生徒の『安心・安全』を優先にした」と説明した。代替策としては、各学校でのテレビ観戦を検討中で「クラスで子供たちと感動を共有できたら」としている。

 また、世田谷区の保坂展人区長(65)も22日に「現状での実施は困難」との意思を表明。区教委側も「区長の発言は承知している。都教委からの通知が来たら速やかに判断する」と説明しているが、やはり都教委の対応の遅れは否めない。

 東京五輪の開幕まで残り1か月を切っても、コロナ禍で「安心・安全」の大会実現には問題山積のままだ。