【直撃!エモPeople】コロナ禍は「直引きフリー売春」全盛時代を生み出している――。新型コロナウイルス感染拡大の第4波はいまだ出口が見えないが、世の中が様変わりして1年以上がたち“売る女”はどう変化しているのか。約30年にわたり、風俗業界を見てきたノンフィクション作家・酒井あゆみ氏(49)が自身の経験とともに最新事情と問題点をあぶり出した。

 酒井氏は最新刊「東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち」で、コロナ禍で風俗店や風俗嬢、買う側の男がどう変わったのか、最新ルポで明かしている。

「六本木 飲みから大人 可能な方 3万~ 加工なしの写真ください」

 これは緊急事態宣言下に男側がマッチングアプリやSNSで募集する“ギャラ飲み”+大人の関係を示す書き込みだ。

「女性の年齢や職業にもよりますが、ギャラ飲みは2時間1万円、そこから“大人”がプラス2万円まで相場は下がってます。バブル時代はギャラ飲みだけで3万円という時代もありましたが、コロナ禍では6分の1。完全に男性側の買い手市場。しかも、タクシー代などの交通費はなし。『写真と実物が違ったら帰ってもらいます』というケースも多いんです」と酒井氏は解説する。

 コロナ禍では、買い手(男)側に「カネを払って感染に行くのか」という風俗店や風俗嬢への偏見と差別が沸き起こり、客は激減した。

「男性側に“素人なら病気を持っていないだろうという幻想と、どうせならプロより素人とやりたい”という願望が生まれた。素人なら交渉次第で買い叩けるという思惑もあり“直引きブーム”になっている」(酒井氏)

 だが、現実の“直引き”には素人だけでなく、失職した風俗嬢やキャバ嬢が大量参入している。

「コロナ禍前、総額8万円のソープにいた女性たちが2万円の大衆店に大移動しました。バック(自分の取り分)は8万円の店で約5万円、2万円の店だと約1万円になるので、なぜと思うかもしれませんが、高級店の客は激減し、お客さんが付かないときもある。1日いくら稼げるかという考え方にシフトした結果なんです。コロナ禍では出勤制限がかかり、稼げない分、空いた日には“直引き”をする。最近ではそうした女性になり代わり、客を募集する“援デリ”業者も現れています」(酒井氏)

 酒井氏自身、19~22歳の間にヘルスやソープ、ホテトルなど風俗のフルコースを経験。処女作「東京夜の駆け込み寺」(1995年)出版以降、業界の真実をタブーなく、伝え続けている。

 約30年間の変遷を「愛人クラブ→デートクラブ→交際クラブ→援助交際→パパ活と名前は変わってもやっていることは同じ。女の子側の意識も変わっていない」と語る。

 一昨年、東京・新宿で起きた“新宿心中”ホスト殺人未遂事件。「ホストをやめるから結婚しよう」という言葉を信じた女による裏切られた末の犯行だった。ホストに貢ぐため、女はパパ活相手の男性と1週間海外旅行に行き、報酬200万円をもらうなどして貢いでいたが、実際はデリヘルも掛け持ちしていた。

「女は『(ホストには)パパ活は言えたが、デリヘルは汚いと思われて嫌われたくなかったから話せなかった』と話したそうです。この感情は“売る女”に共通しています。パパ活は男を選べ、金額も提示できるけど、風俗嬢は男を選べない。生理的に嫌な男でも接客しなければいけない。だからパパ活は彼氏や友達には言えても、風俗は言いたくない。そんなプライドがあるんです」(酒井氏)

 コロナ禍では、風俗業界の持続化給付金問題も話題だ。当初、風俗嬢は対象外だったが、現在は給付対象だ。一方、風俗店はいまだ給付対象ではないため、関西のデリヘル業者が国を提訴。その法廷で国側は「性風俗業者は本質的に不健全なので給付対象外は合理的」と主張している。

 酒井氏は「風俗嬢は体感で9割はもらっていません。要件となる確定申告をしていないから。その理由のトップは昼間の職場や家族に“身バレ”を恐れているから。風俗店は納税しているのに給付金はなしという矛盾がある。これでは店は潰れ、風俗嬢は危険な“地下フリー売春”に追いやられるだけ」と問題視する。

 コロナによって風俗、パパ活市場は男にとっても女にとっても悪い未来へ向かっている。

 ☆さかい・あゆみ 1971年12月12日生まれ、福島県須賀川市出身。18歳で上京後、キャバクラ勤務後、ファッションヘルス、ソープ、ホテトル、AV女優などを経て、21歳でプロダクション設立。95年「東京夜の駆け込み寺」で作家デビュー。同名の深夜番組(TBS系)のMCとして故飯島愛さんと共演。江角マキコ主演のドラマ「独身生活」(99年、TBS系)の原案・監修。小泉今日子主演の映画「風花」(2001年)を監修。主な著書に「レンタル彼氏」「セックスエリート 年収1億円、伝説の風俗嬢をさがして」など。