元陸上選手でスポーツコメンテーターの為末大氏(43)が6日、ツイッターで陸上競技における記録に言及した。

 この日は男子100メートルで山県亮太が9秒95の日本記録を出した。日本人4人目となる9秒台の選手が出現したことに「陸上競技では象徴となる記録が破られると、一気にいく人かの選手がその記録を超えるという現象が度々見られます。人間はまだ見ていないことはできないことだと考え、一度、目にするとあれはできることだと考える性質があります。技術の壁は目に見えますが心理の壁は見えないので壊すことが難しいです」と、これまでは10秒台を切る上で壁をつくっていたという心理的要因の大きさを分析。

 さらに「では、その心理の壁とはなんでしょうか。それは『当たり前』です。人間社会に適応するということは当たり前に適応するということでもあります。それは社会生活を円滑にしてくれますが、一方で当たり前の形に自分をはめ込んでいくことでもあります」と指摘。2017年に桐生祥秀が日本人初の9秒台となる9秒98を記録し、山県まで4人の9秒台の選手が生まれたことは、9秒台が日本人にとって“当たり前”になりつつあるということか。

 さらに「例えば十進法がなければ10秒の壁という概念は生まれません。しかし十進法があまりにも強く私たちの嗜好に影響を与えているので、それが目標になり壁になります」と10秒の壁が持っていた重さを解説した。