関西弁全開でユーモアたっぷりにしゃべっていたかと思えば、全身で怒りを表現しながら鋭く問題点を切り裂く――。そんな姿とトレードマークのちょび髭がすっかりおなじみの京都大学大学院の藤井聡教授(52)がコロナ禍に苦しみ続ける日本の現状を解説。さらに「政治を知りたかったらプロレスを見なさい」とのアドバイスも飛び出した。


【藤井聡教授インタビュー(2)】

 ――中国の覇権主義が加速している

 藤井 そうです。もともとコロナは中国から広まったのに、コロナ禍の中で中国だけが一人勝ちしている。日本も中国も感染はだいたい同じくらいだけど、経済を止めていない。諸外国がロックダウンなどで経済活動を停滞させ、大恐慌のような状況になったのとは対照的で、火事場泥棒ですね。

 ――コロナ後の世界

 藤井 中国の力が圧倒的に強くなり、米中冷戦が深刻化するでしょう。日本は残念ながら〝さざ波〟であわてふためき、自傷行為を繰り返したことで、凋落が決定的になる。G7からの脱落をもたらす。その象徴が東京五輪の失敗と北京(冬季)五輪の成功でしょう。東京五輪は開催されても〝しょぼい五輪〟として記憶され、北京は華々しく開催される。凋落する日本と台頭する中国が対比され、鮮明に世界に印象付けられる。

 ――領土問題も

 藤井 台湾はこの世紀のうちに確実に取りに来ますし、尖閣も危険な状況になっている。中国はまず漁民などを尖閣に上陸させ、なし崩しに実効支配する〝グレーゾーン〟を利用してくると考えられます。日本にはそれに対抗する法体系がないので、指をくわえて見ているだけになる。

 ――竹島のように

 藤井 そうです。ミサイル基地を作り、沖縄米軍に対する抑止力とする。中国の台頭、欧米の相対的弱体化の中で日本が圧倒的に転落し、最悪の未来は米国と中国、両方の属国になる。Wみかじめ料支払い状態です。

 ――回避する手立ては

 藤井 まずは消費税を撤廃して投資を行う。コロナには対応病床を増やしてワクチンも自国開発する。政府が全部国債を発行してやるんです。その中で米国と連携して自衛隊を中心に尖閣、台湾の防衛戦略を展開する。そうすれば中国も簡単には手を出せないし、アメリカも賛成する。憲法9条を改正しなくても、消費税減税と大規模投資を行い、経済をV字回復させれば、対策はできるんです。国力を増強し、国民全体が豊かになれば、現在横行しているポピュリズムも収まってくる。安倍(晋三)さんにも小沢(一郎)さんにも二階(俊博)さんにも、日本人である限り、この〝令和の富国強兵策〟を説明してます。与党野党こだわらず、これをできる政治家が日本の首相になればいいと思いますね。

 ――大のプロレス好き

 藤井 プロレスを見てるとね、政治が分かるんですよ。プロレスってね、大局的プラス歴史で見るでしょ。超世代軍と鶴田軍の戦いだとか闘魂三銃士の台頭だとか、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの覇権とか。オカダや棚橋も、あんな若手の頃があってここまで来たなと歴史を見ながら今を見ているわけですよ。政治もそう。ブックも含めて政治ですから。だからね、政治の大局を知りたければプロレスファンになればいいんです。


 ☆ふじい・さとし 1968年10月15日生まれ。奈良県生駒市出身。京都大学工学部卒。同大学院工学研究科(都市社会工学専攻)教授、および同大レジリエンス実践ユニット長。都市社会工学、社会心理学、行動経済学などさまざまな分野に精通し、第2次~第4次安倍内閣では内閣官房参与を務めた。表現者クライテリオン編集長としても意見を発信している。趣味はプロレス、釣り、音楽など。