関西弁全開でユーモアたっぷりにしゃべっていたかと思えば、全身で怒りを表現しながら鋭く問題点を切り裂く――。そんな姿とトレードマークのちょび髭がすっかりおなじみの京都大学大学院の藤井聡教授(52)がコロナ禍に苦しみ続ける日本の現状を解説。今後進むべき道を提示した。


【藤井聡教授インタビュー(1)】

 ――緊急事態宣言が延長された

 藤井 理不尽極まりない。日本は欧米に比べると感染被害はほとんどなく、こんな経済被害を受けるような状態じゃないのに、昨年はEU全体の2倍の落ち込みをした。なぜかというと、自粛しているから。自粛したから死者数が減ったかというと、ほぼ関係ないんです。この時点で相当アホです。

 ――何でこんなことに

 藤井 政府がやるべきコロナ対策をしなかったから、状況は抑えられてるのに「医療崩壊がー」ってなるんです。重症者がいても耐えられるものを作ってこなかったんだから、国民は批判すればいいんですよ。「蛙の面に水」なんて言葉がありますけど、無礼なことや筋の通らんことをされたら人間って怒るはず。でも、今の日本人は怒らない。蛙と同じ。政府はアホやけど、アホにアホと言わないのもおかしい。そのせいで日本人が亡くなってる。こんな理不尽な話はない。

 ――日本人はおとなしい

 藤井 専門家が脅してだますからです。尾身(茂・新型コロナ対策分科会会長)さんとか西浦(博教授)さんとか感染症の専門家が「自粛しないと感染を広げて人を殺す」という。医療崩壊する患者は、ほぼすべて高齢者なので、高齢者の感染対策をすれば医療崩壊リスクは下がるんです。だから若年層が高齢者にうつす行為を徹底して避ける。この一つだけなんですけど「家族と住んでいる」とか「非現実的だ」と嫌がる。「8割活動を自粛」と掲げる方がよっぽど非現実的ですよ。

 ――言うと批判される

 藤井 「素人のお前が言うな」と僕が叩かれるんですね(苦笑)。僕は都市社会工学が仕事で感染症対策も入っている。学会もシンポジウムも開催してるし、感染症の専門家と学術論文も書いている。玄人なんです。

 ――議論がない

 藤井 こういう議論自体が不謹慎と言われますね。思考自粛を要請されてる。感染を許容するという要素が1ミリでも入ると不謹慎となる。作用と副作用すべてを踏まえた最も適切な感染症対策、つまりコロナで亡くなる方、経済で亡くなる方、うつ病になる方、後遺症に苦しむ方、みんなを見すえた上で一番被害が小さくなるようなベストウェイを探りましょうと言っていますが、当然ベストウェイというのは一部感染を許容するものなので、嫌なんですね。僕は社会心理学が専門ですが単なる集団ヒステリー。これが1年以上続いていて、テレビと一部の専門家が不安心理をあおっている。

 ――ゼロリスク主義

 藤井 コロナへのゼロリスクを求めるあまり、ベストウェイが見過ごされコロナ以外のリスクがすべて無視されている。その結果うつ病が増え、小中高生の自殺は過去最多を記録、若者の教育機会は奪われ、失業・倒産が増加し、所得は下がっています。ゼロリスクを求めるのは、死を意味する。日本全体が滅びることになる。決して諸外国はそんなこと、していない。民主主義国家だから国民の意思に基づいて政治を行いますが、今、日本人に民主主義ができるか問われていると思いますよ。


 ☆ふじい・さとし 1968年10月15日生まれ。奈良県生駒市出身。京都大学工学部卒。同大学院工学研究科(都市社会工学専攻)教授、および同大レジリエンス実践ユニット長。都市社会工学、社会心理学、行動経済学などさまざまな分野に精通し、第2次~第4次安倍内閣では内閣官房参与を務めた。表現者クライテリオン編集長としても意見を発信している。趣味はプロレス、釣り、音楽など。