銭湯に魅せられたフランス人の美マダム 全国1000軒以上、一日11軒回ったことも

2021年05月30日 10時00分

富士山のタイル画をバックに笑顔を見せるステファニーさん(東京・池袋本町「小松湯」)

【直撃!エモPeople】日本の銭湯に魅せられたフランス人女性がコロナ禍でも地道な活動を続けている。ステファニー・コロインさん(36)は大学時代、交換留学で日本滞在中に訪れた銭湯の魅力が忘れられず、再来日後から10年にわたり、銭湯文化を世界に発信。その活動が認められ、2015年には日本銭湯文化協会公認の銭湯大使に任命された。現代日本人が忘れがちな銭湯に、なぜそこまでのめり込んでいるのか、じっくり聞いてみた。

 フランスの名門・リヨン大学在学中、立教大に交換留学で1年間在籍し、2012年に再来日して以降、東京在住とあって日本語も流ちょうなステファニーさんは、げた履き、自転車で現れた。

「銭湯はこれが一番なんですよ」

 銭湯の入り口で革靴、靴下を脱ぐ記者にこう教えてくれた。これまでに訪れた銭湯は日本全国1000軒以上。いかに通い慣れているかが分かる。

 フランス南部プロバンス生まれのステファニーさんが日本に興味を持ったのは高校時代。本、特に小説が好きで、ノーベル文学賞受賞者の川端康成、谷崎潤一郎などの小説を読むようになった。

「人間の気持ちを実直に表現するところや詩的なところがフランス文学にも似ていて、感動しました。写真集も好き。友人からもらった日本の自然の写真にも興味が湧きましたね」

 進学したリヨン大学では日本文学を専攻し、立教大の交換留学時代に友人に誘われ、初めて日本の銭湯を訪れた。通ううちに、その魅力のとりこになったという。

「当時は日本語が話せなかったんですが、オーナーさん、常連のお客さん、みんな歓迎してくれて優しかった。外国人もみんな一緒。近隣の人たちの日常的なコミュニケーションの場になっているのが分かったからです」

 江戸時代に繁盛した湯屋の料金が1銭だったことから呼ばれるようになった「銭湯」。現在の入浴料金は470円(12歳以上、大人、都内)だ。各家庭の内風呂の普及や経営者の後継者不足などから、1954年に約2200軒あったのが2019年には約520軒まで減少した(都内)。


 日本人が忘れがちな銭湯だが、ステファニーさんはこう力説する。

「心と体をリラックスできるのはもちろん、歴史的な建築、芸術的なタイル画、インテリア、オーナー家族の歴史が詰まっています。フランスにもスパはありますが、それは日本でいえばスーパー銭湯。でもそこには銭湯のような地域のコミュニティー、社交場の雰囲気はない。銭湯はフランスでいえば、おいしいパンをその場で食べられるカフェの文化に似ています。常連さんが『あの人、今日は来ないな。どうしたんだろう?』と心配するような。銭湯は高齢者の見守りという役目もあるんです」

 14年にはウェブサイト「Dokodemo Sento」を作り、日本語と英語で日本の銭湯を紹介。そうした活動が認められ、15年には日本銭湯文化協会公認の銭湯大使に任命された。

 17年には著書「銭湯は、小さな美術館」、18年には「フランス女子の東京銭湯めぐり」を出版。20年には母国で「セントー~ラ・アート・デ・バン・ジャポネ(銭湯~日本の風呂文化芸術)」を出版した。

 一日で最高11軒を回ったほど好きすぎる銭湯巡りの初期は「変わってるね~」と珍しがられていたが、今では活動の手応えも感じている。

「私のSNSを見てくれた若い世代の人が『銭湯に行くのは、ためらっていたけど、行ってみたら良かった』『女子会で行ってきました』とコメントをくれたり、リピート客も増えています。世界中から『コロナ禍が明けたら、この町に行くのでオススメの銭湯を教えて』などと毎日コメントが来ますね」

 16年に日本人男性と結婚。勤務していた会社を退職してフリーに。銭湯ジャーナリスト、カメラマンとして活動しながら、今春からは幼いころからの夢だったインテリアデザイナーの専門学校にも通っている。

「銭湯のお仕事はライフワークとして一生続けていきたい。次は英語で銭湯の本も出したいですね。銭湯が好きになる人を増やすことが銭湯への恩返しになると思っています」

 銭湯界の救世主、伝道師としての活動は今後も続く。

 ☆ステファニー・コロイン 1985年5月27日生まれ。フランス・プロバンス出身。リヨン大学在学中の2008年、立教大学に留学。12年、日本の企業に就職し再来日。14年、銭湯を紹介するウェブサイトを開設した。15年、日本銭湯文化協会公認の銭湯大使に任命。16年、日本人男性と結婚。著書に「銭湯は、小さな美術館」「フランス女子の東京銭湯めぐり」「銭湯~日本の風呂文化芸術」(和題)。インスタグラムで毎日銭湯の情報を更新している。

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