SNSで何らかの動物の死骸にしか見えない物体の動画が拡散している。体長5メートルほどありそうなドラゴンらしきものは、赤みがかったグレーの体色で、ぬめぬめした質感を醸し出す。先月末から、海外のツイッターで「これは何?」と取り上げられるなどして広がった。アラビア語のナレーションは「イエメンのドラゴンだ」と言っているという。すぐに日本のSNSでも「これはすごい映像だ」「ドラゴンだ!」と大騒ぎに。その正体に迫った――。
 
 35秒ほどの動画は、土の上に横たわる奇妙な生物らしきものの足を映すシーンから始まる。長く太い尾、鋭い爪。極太の太もも。コウモリのような羽があり、背中から首にかけてトゲが並んでいる。長い首の先には、既存の生物にはありえない巨大なティラノサウルス風の頭部に角が生え、鋭い牙を持つ。どこからどう見ても、西洋のドラゴン的な外見。

 アラビア語のナレーションは、アラビア語を理解する者によると「イエメンのドラゴンだ」と言っているという。

 恐竜なのか、未確認生物(UMA)なのか、それともドラゴンは実在するのか。

 超常現象に詳しいUFO研究家の竹本良氏は冗談半分で「これは、ひょっとしたらドラコニアン(竜人のエイリアン)かもしれません。レプティリアン(爬虫類型エイリアン)を従えるドラコニアン。ようやく正体を現し始めたのかもしれない」とわくわくしていた。

 ドラコニアンとはエイリアンのボス的存在で、レプティリアンを支配下に置いている。レプティリアンは変幻自在で、地球人に変身し、中には政財界のトップにまで上り詰め、世界を裏で支配する者もいるとされる。本紙でも陰謀論者の間で「ヒラリー・クリントン氏=レプティリアン説」なるものが騒がれたのを報じたことがあった。

 しかし、オーストラリア在住で恐竜の化石を発掘している寺野左右留守氏はこう分析する。

「こりゃなんじゃ!?っていう物体ですね。たぶん映画の小道具かなんかじゃないかな。尻尾の先っちょにアンキロサウルスの小型ハンマー、背中には羽、頭には角、目が小さい、後ろ足の爪と前足の爪が同じ、なんかあっちこっちからくっつけた感じですね」

 つまり、作り物、フェイクじゃないかというわけだ。

 そこで、取材を進めると真相が判明した。

 これは2016年に公開されたユーチューブチャンネル「フアン・ヴィラ・エレーロ」の映像だった。

 スペイン在住のエレーロ氏は16年2月25日に同チャンネルで「『第四千年紀』というテレビ番組の紹介として、このすてきな偽物を作りました」として、ドラゴンの死骸を防護服を着た研究者らが調査している56秒のプロモーションビデオを公開していた。ナレーションは一切入っていない。しかも、白黒動画だった。

 UMA事情通は「この動画の一部を切り取り、彩色し、UMAマニアが多い欧米人や日本人には聞き取れる人があまりいないアラビア語のナレーションを加えたものが、今になってSNSで拡散して騒ぎになったというわけですね」と指摘する。

 しかも、エレーロ氏はそれに先立つ同年2月22日に同チャンネルで「第四千年紀のドラゴンを作製する」というタイトルで、「これが、私たちのワークショップで、『第四千年紀』というテレビ番組のために高さ4メートルを超えるドラゴンを段階的に作製した方法です」として、メーキング映像を公開していた。

 なんともガッカリな結果だ。