東京五輪・パラリンピック組織委員会が日本スポーツ協会を通じて募集したスポーツドクターの求人が、なぜか大人気となっている。

 組織委が日本看護協会に看護師500人確保の依頼をした際には、批判が殺到。愛知県医療介護福祉労働組合連合会はツイッター上でデモを実施し、本紙には「現場は五輪どころではない。1人出すのも無理」と訴えていた。

 ところが、看護師と同様に新型コロナウイルスのワクチン接種が行えるスポーツドクターは14日の締め切り日までに、当初予定していた約200人を大幅に上回る393人が応募。看護師とスポーツドクターの集まり方に大きな差が生じている。この違いは、いったい何なのか。

 その理由について、ある医療関係者は〝真逆の事情〟があると分析。「(スポーツドクターは)純粋に五輪に参加したい人もいると思うが『五輪に携わった』という〝肩書〟が欲しい人もいるのではないか。今後スポーツに携わっていく中で、引き抜きなどのチャンスを得られるかもしれない。例えば、講演会などをやるとしても、自己紹介に『五輪に携わった』ってあると大きい。経歴としても強くなる」と指摘した。

 五輪の価値はアスリートだけでなく、スポーツドクターにとっても大きいというわけだ。その一方で、看護師にメリットは少なく同関係者は「辞退が多いのは、五輪に携わったところでプラスにならないから」と説明。〝ハク〟が付かないことから、人気がないとの見方を示している。

 スポーツドクターも看護師もあくまでボランティア扱いだが、スポーツドクターの応募殺到の裏には五輪後も見据えた〝思惑〟が隠されているようだ。もちろん、高まる世論の反発により東京五輪が開催中止に追い込まれなければ…の話だが。