世界的ロックバンド「DIR EN GREY」が32枚目の新シングル「朧(おぼろ)」を4月末にリリースした。激しいイメージがある同バンドだが、「朧」はバラード。インタビューに応じたリーダーの薫は、イメージと真逆の曲にした狙い、さらには緊急事態宣言で延期となっている有観客ライブへの思いを熱く語った。


「朧」は、昨年8月にデジタルリリースした前作「落ちた事のある空」以来、8か月ぶりの新曲になる。

 薫は「前作はコロナ禍で、店頭で販売できるかどうか、状況がどうなるか分からなかったので、デジタルリリースという形にした。今回はパッケージ版リリースで『通常に戻った』というふうになると思ったんですけど、今回の方が緊急事態宣言の影響で、お店が開いてなかったですね」と苦笑交じりに話した。

 激しいサウンドのイメージがあるバンドだが、「朧」は正反対のバラードとなった。

「メロディアスで、聴く人の耳に入っていきやすい曲がこの時代にはいいのかな、と思っただけなんですけどね。あとはボーカルの京の意見も理由の1つですね。京くんが昔、LUNA SEAのSUGIZOさんのアルバム作品に参加したことがあって。その時の歌もバラードだったんですが、SUGIZOさんのファンの方から『こういう曲も歌えるんだ』と驚いた反応があった、と。うちらのバンドってどうしても激しいイメージしか付いていないので、こういうバラード曲もできますよ、という意味もあります」

 こだわった点については「普通にやれば、いわゆる、パワーバラード、ロックバラードという流れには持っていけるんですけど、でも『そういうのだけでは物足りないな』と。自分たちならではの質感というか、構成を打ち出せれば、という点です」と明かした。

 バラード曲を歌うことへの反響も大きい。

「ファンは自分たちのことをよく知ってくれているんで、そういう部分も知ってくれてるんです。だから、そういう部分を自分たちをまだ知らない人たちに対して、『DIRってこんな曲もあるんだよ。こういう曲こそ、バンドの良さが分かるよ』と、SNSとかで発信してくれています」

 今月6日には、昨年2月に行ったフランス・パリ公演以来、1年3か月ぶりとなる観客を入れての有観客ライブを東京ガーデンシアターで行う予定だったが、緊急事態宣言が発令されたため残念ながら中止に。多くのバンドがコロナ禍に見舞われているが、DIRも例外ではない。

「なかなか、ライブをやらせてもらえないですねぇ(苦笑)。楽しみだったので残念ですね。世の中がこういう状況でのライブというのはどういうものなんだろう?というのがありましたから。どういう空気感なのか。逆にいうと、こういう時にしか体験できないことなので。もう、あれですね、大型連休にライブしちゃいけないですね」と薫は冗談めかしたが、危機感も当然ある。

 ライブは結局、6月5日に延期になった。ただ緊急事態宣言は今月末まで延長。東京都は12~31日の間、劇場やイベントは時短と人数制限を条件に開催可能と発表したが、感染者の状況次第ではライブの〝再延期〟もありえなくはない。

 薫は「そこもムリだったら、どのバンドもムリでも始めちゃうんじゃないですか? もう待ってられないですよ。それが良いことなのかは分からないですし、うちもどうなるか分からないですけど。ライブ活動をスタートするバンドが出てくると思います」。

 最後に薫は、初めてDIRの音楽に触れるリスナーに対し「ミュージックビデオは激しいんですけど、DIRはこういうバラード曲もあるのでね。ぜひ、聞いていただきたいですね」とメッセージを送った。

(このインタビューの特別版を東スポnoteで配信します)


 ☆ディルアングレイ 1997年結成。メンバーは京(ボーカル)、薫、Die(ギター)、Toshiya(ベース)、Shinya(ドラム)。〝カテゴライズ不能かつ不要〟なロックバンドとして活動し、欧米でも確かな支持層を確立している。5月6日に東京ガーデンシアターで開催予定だった1年3か月ぶりの有観客ライブ「疎外」の振り替え公演が6月5日に行われる。