マニア垂涎!廃虚の女王「マヤカン」 ファン熱望の館内見学実現へ3つのハードル

2021年05月05日 16時23分

廃虚マニアの聖地「旧摩耶観光ホテル」

 その美しいたたずまいから、廃虚マニアが“廃虚の女王”と呼ぶ兵庫県神戸市の「旧摩耶観光ホテル」、通称マヤカンが、国の登録有形文化財に指定される。文化財と認められたことでさらに注目度が上がり、観光地として見学しやすくすれば、軍艦島(長崎県)のように人気になること必至だ。しかし、そのためにはクリアしなければならない大きな問題があるという。

 マヤカンは1930年(昭和5年)、摩耶山の中腹に当時流行していたアールデコ様式を取り入れて建設された。福利厚生施設、ホテル、合宿所として利用され、93年を最後に閉鎖された。

 残された建物は曲面や丸窓を用いたデザインと緑の中で朽ちる姿が美しく、廃虚マニアの間で話題に。いつしか「廃虚の女王」と呼ばれ、マニア憧れの存在になった。

 このマヤカン、実は取り壊しの危機に直面していた。理由は不法侵入が相次いだため。しかしNPO「J―heritage」が持ち主を説得。保存活用、観光地化を目指し、「ひょうごヘリテージ機構H2O神戸」も加えた3者で2017年にクラウドファンディングを行った。目標の500万円を上回る727万円余りを集めた。

 集まった資金は不法侵入を防ぐための防犯設備の導入、保存するための修復、登録文化財に申請するための調査などに使われた。こうして文化財として国に認められることになったわけだ。

 マヤカンを巡っては、現在も「摩耶山・マヤ遺跡ガイドウォーク」で近くから外観を見ることはできる。しかし建物内に立ち入ることはできない。

 建物内の美しさもマヤカンの人気の理由であり、文化財指定後は館内見学のニーズも高まりそうだ。そして館内見学こそ、観光客を呼び込む起爆剤になりそうだが、実現するためには越えなければいけない高いハードルがあるという。

 前出のひょうごヘリテージ機構の理事で一級建築士の松原永季さんは「安全性が担保されない限り、観光で中に人を入れることはできません」と、問題点を3つ挙げた。

「まず耐震性の問題です。耐震診断をしようにも、設計当時のデータがほとんどなく、鉄筋の配筋の状態、コンクリートの中性化の度合いを調べなきゃいけません。大きな問題です。これに費用が数百万円かかります。次に壁の漆喰などが剥落していて、事前に取り除くなどしなくてはいけない。また地盤の一部が崩れています」。気軽に入って見学など、とてもできる状態ではないのだ。

 松原さんによれば、「文化財に指定されることで、助成を受けやすくなります。これから探して活用させていただきたいと思っています。足りない部分はクラウドファンディングでお願いするかもしれません。まだ時間がかかります」。文化財指定で光が見えたとはいえ、観光で館内見学できるのは先になるという。

 松原さんは「摩耶観光ホテルが神戸市と摩耶山の重要な観光資源になるのは間違いありません。より多くの方にご覧いただいて、その価値を分かってほしいと思っています」と話す。マヤカンは廃虚マニアの憧れから、大きな集客スポットになろうとしている。

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