世間は大型連休に突入! 昨年同様、コロナと向き合いながらの生活が重要となってくるが、我々は一体いつまで我慢すればいいのか。4月6日に「根津潤太郎」のペンネームで、書き下ろし時代小説「看取り医 独庵」を出版した神経内科医・米山公啓氏が日本の医療が抱える問題を語った。

――同作の主人公・独庵こと壬生玄宗は「患者に希望を与えること」を大切にして患者に寄り添ってきた。診察で大切にしていることは?

 米山氏 自分も40年近く医者をやっていると医療に対する思いも変わってくる。正義感というか。医学というのは診断する前に血液検査やCT、MRIを行う。それだけじゃなく、患者に寄り添うような視診や触診を大切にしたいと思っている。江戸時代にはそのような診察方法しかなかったわけで。今の若い医者を見てて思うのは、患者を診察するときにパソコンばかり見てて顔すら見ないというのが多い。それはおかしな話で、病気を治すというのはただ単に治すだけではなく、その人の社会的な背景とかそういう問題を解決することでもある。
 
――現代社会では新型コロナに感染すると重症化、最悪の場合は死に至る。患者が希望を持つのは難しいのでは

 米山氏 病気の種類から言えば、コロナの治療法はいっぱいある。最終的にはECMO(人工心肺装置)を付けることができる。僕が専門にしている神経内科の病気はほとんど治療法がない。最近は少し神経系の薬も出てきたけど、そういう意味では治療ができるコロナは希望のある病気。重症化する人もいるけれど助かる人の割合の方が圧倒的に多いわけで、きちんと治療すれば早く治る。

――コロナを収束させることはできるのか

 米山氏 人の出入りが多くなると感染者が増えるので、緊急事態宣言を出したり解除したりを繰り返していくしかない。100年前に流行ったスペイン風邪は4波くらいまであって、今のようなワクチンや的確な治療法もなく収束までに2年以上かかった。これはある意味で感染症の特徴でもある。コロナは流行してから1年ちょっと経ったが、もう少し時間が経てば徐々に収束していくのではないか。今はワクチンも接種できるようになっているのでもっと早く収束できる可能性もある。

――ワクチンを巡っては政府の対応に不満の声が多く上っている。

 米山氏 政府の対応はまったくダメ。デジタル化だとかカルテの情報の共有とか、ずっと前からやろうとして全然進んでない。そういう医学のデータをきちんと情報共有するということができないまま、こういう時代(コロナ禍)になったから、なかなか患者の病気の把握もできてないし。医学は今、厚労省と文科省と内閣府が関わっているが全体を統括するものがない。医療省みたいなものを作らなければいけないと思う。コロナ患者を受け入れていない病院の医療従事者はいまだにワクチン接種できていないけど、その辺の調整もうまくいっていない。迅速にやるならやっぱりトップダウンでやらなければいけない。

☆よねやま きみひろ 東京・あきる野市にある米山医院の院長で神経内科の専門医。評論家や作家としても活動し脳に関する著書を多数執筆。