新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない大阪府の吉村洋文知事(45)は19日、政府に緊急事態宣言の発令を要請する考えを示した。20日に対策本部会議を開催し、正式に決定する。また、東京都も今週中に要請する方向で調整に入った。昨年並みの強い内容も予測される3度目の緊急事態宣言に、すでに疲弊しきった国民は荒れてしまうのか。専門家が起こりうる事態を指摘した。


 府では18日、過去最多となる1220人が新型コロウイルスに感染。通常は感染者数が低めに出やすい日曜日にもかかわらず、過去最多を更新した。

 前回の緊急事態宣言とほぼ同等の内容であるまん延防止等重点措置が5日に適用され、約2週間後に現れる効果を「見極めたい」と話していた吉村氏だったが、結果を受けて「変異株を十分に抑えきれていない」と判断。今週の数字を確認することなく「感染が厳しい状況が続いている。医療提供体制も極めて厳しい。国に緊急事態宣言の要請をするべきだと判断した」と踏み切った。

 内容については「国が決めること」とした上で「休業要請も含めて、人の動きを止めるような厳しく強い措置が必要。ダラダラとではなく強い対策を集中して実施することが大事」と強調。百貨店やテーマパーク、ショッピングモールなどに休業要請する必要があるとの認識を示した。

 大阪市の松井一郎市長は、宣言が出れば市立の小中学校での授業を「基本的にオンラインにする」と明かした。

 一方、東京都もまん防適用後も人出の減少が見られず、感染者は増加傾向だ。感染者に占める変異株の割合も増えていることから、週後半にも政府に対し、緊急事態宣言を要請するかどうか判断する見通しとなった。小池百合子都知事は18日、「先手の対応が不可欠だ」として宣言の要請も検討する考えを示していた。

 政府が発令を決定すれば、3度目の緊急事態宣言となる。昨年並みの強い措置が講じられるとなると、思い出されるのは〝自粛警察〟だ。

 犯罪心理学者で防疫対策に詳しい北芝健氏は「上から『移動するな、集まるな』とお達しが来ると、それをやらないことには仲間外れになる。守らないと、よってたかってやられちゃうし、鬱屈すると弱いところを攻撃し出しすのが日本ですから、再び自粛警察が現れるのは間違いない」と予測する。

 コロナの感染が行ったり来たりを繰り返し、すでに国民と経済は疲弊しきっている。3度目の緊急事態宣言発令により、人々はどうなるのだろうか。

「表向き受け入れるが、面従腹背の行動を取るのではないか。つまり裏で犯罪に走る可能性がある。コロナ禍で問題となっていた虐待やドメスティックバイオレンスはより増えるでしょう。また、具体例として、安い料金で多くの人を集めて飲ませる〝3密酒場〟の営業や、警察に見つかるのを避けるため、キャンピングカーなどを使った移動式の売春がはびこる可能性がある」(同)

〝闇営業〟が広まれば、衛生面の悪化も予想される。

「コロナとは別の感染症が広まる可能性もある。コロナが広まったころにロシアのモスクワでエイズがまん延したんです。経済的に困窮し、栄養状態が悪化すれば、結核が広がる可能性もある」(同)

 北芝氏は両親が医者で、自身も医療法人の理事を務めていたことがあり、疫学にも詳しい。

「確かに変異株の影響で感染者は増えていますが、海外の医療関係者は日本の状況を『大変だというけど実体がない』と見ている。死者数は少なく、日本の医療は優秀だと。だから、ワクチンも回ってこないわけです」

 こう指摘した上で「コロナで一番怖いのは、ウイルスそのものよりも人心の荒廃なんです」と懸念した。

 緊急事態宣言の発令だけでなく、人々の心に寄り添う施策も重要だろう。