ヨットでの太平洋横断に再チャレンジするフリーキャスター・辛坊治郎氏(64)の遺言とは――。「残りの人生は自分の楽しみのために使いたい」という辛坊氏だが、日本の現状を憂いている。このままでいいのか。日本が抱える問題、未来を託せる人材、そして自身の究極の楽しみを語り尽くした。

【遺言① 現役世代を増やす施策を!】 
 日本って高齢者自身に自覚がないんだけど、日本の高齢者って世界で一番恵まれてるんですよ。逆にいうと日本の現役世代は世界で一番虐げられてます。明らかに。

 スウェーデンなんか80歳過ぎたら積極治療してもらえませんから。90歳代の高齢者が医療費全額タダで新型コロナで人工呼吸器、エクモ使ってもらったりするってのは世界の中で日本だけです。

 高齢者が恵まれてるのは悪くないです。それが持続可能ならね。明らかに持続可能じゃなくて、そのシワ寄せがどんどん現役世代にいってる。だけど政治的に現役世代は力が弱い、数が少ない、言い分が通らない。それどころか選挙にも行かない。この国は高齢者に食い潰される国になりつつある。現状そうなってます。

 医師会だって今回のコロナで、高齢者に死なれると困るわけですよ。高齢者が飯の種だからね。高齢者を軸に社会全体が動いてる。産業構造もそうだし、特に医師会なんて典型だよね。日本の医者って高齢者医療で飯食ってますから。この人たちに死なれると困っちゃう。

 とにかく若い人には犠牲を強いる社会になってるけど、持続可能ではないよね。こんなことしてたらどんどん国家は先細りになる。現役世代を増やす施策をしないと日本を終わると思う。本当にそう思いますよ。

【遺言② 日本の将来を託したい人材】
 橋下徹はイキがいいね。大阪府知事の吉村洋文もいいよね。吉村はスケベ心があり過ぎるというか、本人は「絶対、国政なんか出ません。大阪のために頑張ります」って言うんだけど、本音で言うと見え見え。総理大臣なりたいだろって(笑い)。「見え見え過ぎるよ」ってアドバイスしたいぐらいなんだけど。能力とヤル気は素晴らしい。そういう人に活躍してほしいと思うよね。
 
 橋下はもしかすると、もう出る気がないのかもしれないね。やる気を出したらきっと素晴らしいと思うんだけど。最近はもう、すっかり評論家みたいになっちゃってますから。気持ちは分かるんですよ。大阪府知事と大阪市長を通算8年やったかな。その間におそらく失ったお金は2桁億円くらいはいってるはずだから。それを全部捨てちゃって退職金までもらってないからね、彼は。その分を何とか取り返して。あそこ子供が多いから、たぶん一番下の子供が大学卒業して安定するという、彼の中で設計図ができるまでは出ないだろうな。それができたら出てくる可能性はあるけれど。今のところちょっと出てくる気配がないよね。

 人柄はもしかしたら悪いかもしれないけど、能力的に素晴らしい。能力を正しい方向に使うんだったら応援したいと思うけど、今の段階では分からない。

【残りの人生について】
 好き勝手しゃべるのも疲れた。だってしゃべっても、世の中動かないもん。一生懸命頑張ってるつもりはあるんだけど、どうもやっぱりね。才能がないんだね、世の中を動かすだけの。「こうなったらいいな」って思いはあるけれど。そんなに簡単じゃないよね。
 だったらもう、残った人生はやっぱり自分の楽しみのために使いたいよね。自分にとってどっちが楽しいかの話なんだけど、本田翼とご飯を食べに行くのに10万円使うのと、飢えて困ってる子供に500円で飯食わすのと、どっちがオレにとって楽しいか。子供の方が楽しいような気がするんだよね、最近。いろんな意味で究極の自分の楽しみを求める残りの人生を歩みたい。実際に本田翼がいたら? そりゃ本田翼だろ(笑い)。

 ☆しんぼう・じろう 1956年4月11日生まれ。鳥取県出身。早稲田大学卒業後の1980年、読売テレビにアナウンサーとして入社。「ズームイン!!朝!」「たかじんのそこまで言って委員会」などに出演。2010年に同局を退社しフリーに。13年、全盲のセーラー岩本光弘氏とヨットで太平洋横断にチャレンジするもクジラの群れと衝突。救命いかだで漂流し、海上自衛隊に救助された。ニッポン放送のラジオ番組「辛坊治郎ズーム そこまで言うか!」は一時休演。