閑静な住宅地にある廃虚が注目を浴び始めている。東京都杉並区にある「商船三井 上井草社宅」に廃虚マニアや建築構造物マニア、コスプレイヤー、写真愛好家などが足を運んでいる。

 この建築物は1970年代に建てられたとみられ、2018年まで住居として使われていた。現在は閉鎖されているため敷地内に入ることはできないが、その独特の外観がフォトジェニックなことから注目を浴びている。

 特徴は、住宅公団などで多く採用されていた階段室型の住棟になっていることや階段室部分にある門型コンクリートが縦にスラッと伸びていることだ。連立している縦線と横線の構成が美しい。

 現在、上井草社宅は取り壊しを待っているような状態。敷地を取り囲むように柵が作られていて、中に入ることはできない。建築構造物マニアの男性はこう語る。

「ものすごいディストピア感を感じますよね。このようなものが都心部にあるなんで驚きです。構造的に考えると、階段室型の進化形でしょうね。階段室を開放的にしてあるけれど、雨を多少しのげるように上だけ残している感じと言ったらいいのかもしれません。様式的には、メタボリズムの影響を受けた亜流的な感じなのかもしれないですね。デザイナーも分からないですけど、本当に造形美には心を奪われてしまいますね」

 歴史のある名門企業の社宅にしては、ユニークな構造をしている上井草社宅。いつ取り壊されるかは全く分からない。