次はアナタの街にやって来る――。過去最多となる8人が立候補した千葉県知事選が21日、投開票され、立憲民主党などが支援した熊谷俊人前千葉市長(43)が圧勝で当選した。今回の知事選には異色候補が多数出馬し、バラエティー化した政見放送は物議を醸したが、選挙イヤーとなる今年はこの流れがさらに加速しそうだ。

 知事選は熊谷氏、自民党が推薦した関政幸氏(41)、共産党が推薦した金光理恵氏(57)の3人が国政政党からの支援を受ける候補ということで、一般紙は“主要3候補”として取り上げた。ところが選挙戦が始まってからネットで話題になったのは、残る5人の候補者だった。

「ワクチン打つな危険」と訴えた国民主権党の平塚正幸氏(39)、政見放送で彼女に愛の告白をしたベーシックインカム党の後藤輝樹氏(38)、地域通貨「房」の発行を訴えた元県立高校校長の皆川真一郎氏(66)、「千葉県全体のディズニー化」を掲げ、顔面白塗りのピエロに扮した「千葉県全体を夢と魔法の国にする党」の河合悠祐氏(40)、政見放送や選挙公報で「当選して小池都知事と結婚」と夢を語った無所属の加藤健一郎氏(71)だ。

 政見放送は「絶対に笑ってはいけない」「エンタの神様か」「R―1より面白い」とネット上で盛り上がった一方、「選挙がおもちゃにされている」「千葉県民として恥ずかしい」「税金の無駄遣い」などと批判の声もあり、賛否両論が飛び交った。

 一方で、知事選の投票率は過去2回、31%台だったが、今回は約8ポイント増となる38・99%にまで上昇した。熊谷氏の1強ムードで興ざめだった知事選に異色候補組が良くも悪くもスポットライトを当てた功績は、少なからずあったともいえる。

 このような選挙のカオス化は今後も続きそうだ。昨年の都知事選で過去最多となる22人が立候補すれば、今年1月の埼玉・戸田市議選には歌手のスーパークレイジー君や愛煙党の渡久地ゆうき氏らが立候補したように、異色候補が地方選も含めて次々と選挙に打って出る現象が起きている。

 ネット選挙の解禁で、ユーチューブやSNSを通じた選挙活動が可能になったことで、立候補の敷居は低くなっている。千葉県知事選は立候補に供託金300万円を要したが、NHKと民放で放送される政見放送はネット上でも拡散され、費用対効果を考えれば、没収でもお釣りがくるほどだ。

 今回の知事選で敗れた候補は、次のターゲットに向け動いている。今年は7月ごろに都議選、10月までに衆院選が行われる見込みだ。都議選は政見放送がなく、衆院選も国政政党の候補者でなければ出演機会はないが、それでも注目度が高い選挙とあって、各陣営は手ぐすね引いている。

 さらに異色候補が大集合すると予想されているのが、11月に予定される東京・葛飾区議選だ。立候補するには選挙の3か月前から同区内に居住しなければならないが、本紙の調べでは、既に複数の異色候補が同区に引っ越し済みで、立候補をほのめかしている。

 前回は定数40に対し、59人が立候補した。今年は異色候補がひしめくカオスな区議選となること必至だ。