人気急上昇中の若手俳優・藤原季節(28)が主演する映画「のさりの島」が5月29日に公開(@ユーロスペース)されることが発表された。同映画は2020年に公開予定だったが、コロナ禍により延期となっていた。

 舞台は熊本・天草の商店街。映画のタイトルにもある「のさり」という言葉は、天草地方に伝わる「いいこともそうでないことも、自分の今ある全ての境遇は、天からの授かりものとして否定せずに受け入れる」ことを意味する。天草の優しさの原点ともいえる言葉だ。

 映画は藤原演じる「オレオレ詐欺の旅を続ける若い男」と、今作が遺作となった女優・原知佐子演じる老女「艶子」の物語。艶子は、その若い男を孫の〝将太〟として招き入れる。将太は艶子との優しい〝ウソ〟の時間に居場所を見つけていくという心温まるドラマ。コロナ禍により人とのつながり、生き方が見直されるようになった今だからこそ「のさり」の優しさ、天草の持つ人間性が心に染みわたる。〝その土地に暮らす〟ということの重みと、人のつながり、心の交流が胸にじんわりと時を刻んでいく。

 本作の山本起也(たつや)監督は「ウソという言葉はあまり良い意味で使われませんが、ウソの中でこそ救われる、ということがあると思ったのです。あるいは、この映画のセリフを借りれば『まやかしでも、人には必要な時があっど(ある)』ということかもしれません。オレオレ詐欺の男と、電話を受けたおばあさん。2人がついたウソが、寂れた街のシャッターの向こうで、いつしか本当になる。ふと訪れた天草でこの映画の話をしたところ、そこに居合わせた方がこう答えました。『監督、そん話、天草だとあるかもしれんばい』。この映画は天草で撮らねばならない、そう心に決めた瞬間でした」とコメントを寄せた。