米政府高官は13日、バイデン政権が北朝鮮に対し、国連の北朝鮮代表部などいくつかのルートを通じて1か月近く接触を試みているものの、現時点で反応がないことを明かした。

 バイデン政権発足直後、ブリンケン国務長官が北朝鮮に対して近隣諸国と協力した新たな制裁措置を検討すると話すなど、金正恩総書記と歴史的な会談を3回実現したトランプ前政権からの方針転換を掲げていた。今回、接触を試みたのは北朝鮮による核とミサイルの開発問題に取り組む対話の糸口を探るためとみられるが、いきなり肩透かしを食らっている格好だ。

 いまだバイデン氏の大統領就任に無反応を貫き、バイデン氏側からの呼びかけにも無視を決め込む正恩氏。バイデン氏のメンツが丸潰れだ。

「このまま北朝鮮との接触ができない状態が長引けば、トランプ前大統領にバイデン政権批判の燃料を投下することになりかねない。金正恩氏と首脳会談を3回も行った実績は今も色あせていない。今後、対話できないまま北朝鮮が強行策に出れば、2024年の大統領選を狙うトランプ氏の存在感が高まることになる」(在米ジャーナリスト)

 北朝鮮の沈黙は“挑発”の前兆になりえることは、歴史的に証明されている。ブリンケン国務長官とオースティン国防長官は15日から日韓を歴訪し、両国の外務・防衛担当閣僚とアジア政策を擦り合わせるが、ここで「近隣諸国と協力した新たな制裁措置を検討する」の言葉通り、北朝鮮にとって厳しい共同声明が出されれば、いきなりミサイル発射でバイデン政権に“NO”を突き付ける可能性は十分ある。「金正恩氏はバイデン氏ではなく、トランプ氏の大統領再任を望んでいたといわれる。今や米本土にまで届く大陸弾道ミサイルも有しており、バイデン氏は北朝鮮政策で難しいかじ取りを迫られる」(前出ジャーナリスト)

 国内からはトランプ氏、国外からは正恩氏。バイデン氏にとって頭痛の種となりそうだ。