未曽有の被害をもたらした東日本大震災発生から、今月11日で10年となる。もちろんまだ復興途上で、支援活動は継続する必要があるが、昨年から続く新型コロナウイルス禍で、現在は現地を訪れることもままならない状況だ。そうした中で我々は何できるのか? 岩手県大船渡市を応援する「さんりく・大船渡ふるさと大使」を務め、復興支援を続けている女性3人組「アカペラ・ユニット XUXU(シュシュ)」が取材に応じた。


 XUXUが「さんりく・大船渡ふるさと大使」に就任したのは、震災が発生する前の2009年10月のこと。3人とも大船渡の出身ではないが、なぜか「ご縁があった」とasukaは言う。

 yukiは「大船渡の人も当初は『アカペラって何?』という感じだったと思うけど、受け入れてくださった」。現地でコンサートを開くなどの活動をしてきたが、就任から約1年半後の11年3月、あの東日本大震災が発生。海の街である大船渡は津波による大きな被害を受けた。

 震災が発生した直後は交通網が遮断され、大船渡を訪れることもできなかった。ようやく行けたのは5月になってから。「まだ瓦礫もたくさんあった。海の街なので、一番の繁華街が津波で壊れたままでした。駅も壊れていたし」(yuki)

 当時は仮設住宅も完成しておらず、被災者は公民館や学校の体育館に設置された避難所で生活しており、XUXUも避難所を訪問したという。

「何か所かで歌わせてもらいましたが、正直言うと『いま、歌いに行く必要があるのか』という思いもあった。必要なものがもっとあるんじゃないか、と。行って、逆に邪魔になるのでは、という不安があった」(asuka)

 だが歌い終わった後、ある被災者はXUXUに「初めて泣けたよ」と伝え「震災が起きてから生きるということに集中して、涙も出なかった。でもあなたたちの歌を聴いて、初めて涙が出た。感情を出せたことがうれしい」と感謝したという。

「歌ってこういう力もあるんだ、と思えた瞬間でした」とasuka。その後は1年間に平均3~4回、現地に赴いた。

 被災地で活動できたのは、アカペラユニットだったことも大きい。

 yukiは「アカペラって重い機材も何もいらないから、人が集まれば音楽ができてしまう。毎年、被災地に行って活動できたのもアカペラだったからだと思います。まあ私たちが元気を届けに行ってるつもりが、元気をいただくことが多かったけど」と言う。

 当初は瓦礫だらけだった街も、年を追うごとにきれいに整備されていくのも目の当たりにしてきた。震災から10年ということで、本来なら大船渡に行きたいところだが、新型コロナの影響でそれも叶わなくなった。そこで「何かできないか」と思い、ユーチューブで動画を配信することを決めたという。

 内容は参加者を募集し、XUXUが大船渡のために制作した楽曲「camellia~椿のうた~」のサビの部分を歌った映像をメールで送ってもらい、編集してみんなでエールを送る、というものだ。

「さっきも言ったようにアカペラってアナログだし、私たちも機械に強い人間は誰もいないので、四苦八苦してやりました」(yumi)

 動画は震災発生からちょうど10年となる、11日午後9時に配信をスタートさせる予定だ。


 ☆アカペラ・ユニット シュシュ メンバーは国立音楽大学出身のyuki、asuka、yumi。2001年に結成し、02年にメジャーデビュー。現在まで13枚のアルバムをリリース。09年10月から「さんりく・大船渡ふるさと大使」を務める。昨年9月にはアルバム「大船渡物語」をリリースした。今月11日には、大船渡を応援する思いをデザインしたオリジナルTシャツ(3500円)を発売。売り上げの一部は寄付に充てる。詳細はオフィシャルサイトに掲載。