東京五輪・パラリンピック組織委員会は16日、女性蔑視発言で辞任する森喜朗氏の後任を決める候補者検討委員会の第1回会合を行うが、参加メンバー等が非公表という密室ぶりに批判が集まっている。

 教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏はブログで「会長選定委員会の選考過程は真っ暗な闇です」と苦言を呈しているように、不透明さに疑問が投げかけられているのだ。

 そんな組織委員会は過去に何度もニュースになってきたが、実は昨今、よく話題になる「上級国民」という言葉の〝生みの親〟でもある。

「上級国民」は2019年の池袋暴走事故を起こした旧通産相工業技術院の元院長の飯塚幸三被告から使われたと思っている人が多いだろうが違う。「上級国民」が大きな盛り上がりを見せたのは2015年の東京五輪・パラリンピックのエンブレム盗用騒動が最初だった。

 盗用騒動を収束できないと判断した組織委員会はエンブレムの白紙撤回を決定。同年9月に記者会見を行った。そこには武藤敏郎事務総長も出席。今、会長後任問題でもスピーカー役を務めている人物だ。

 武藤氏は会見で「一般国民の理解が得られないことは、我々も共有する懸念がある」と、〝一般国民が理解しないから〟エンブレムを取り下げることに決めたと明かした。この会見で何度も繰り返された「一般国民」という言葉に、会見の生中継を見ていたネットユーザーが〝上から目線〟を感じたのか、「上級国民なら理解できるのか」と反発。新語が生まれた瞬間だった。

 当時の会見で本紙が武藤氏に「一般国民とは誰のことなのか」と聞くと、武藤氏は笑いながら、「メディアも政治家もよく使う。一般国民が誰なのかは答えがない。メディアなどを通じて総合的に判断するしかない」と煙にまいていた。

 この年、「上級国民」は新語・流行語大賞にノミネートされるほどになった。そのきっかけが組織委員会であり武藤氏だった。