東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)は4日、3日のJOC評議員会で、女性蔑視とも取れる発言をしたことについて会見を開き、発言を撤回して謝罪した。しかし、会見は逆ギレ、イライラの連発で、国民からはバッシングの嵐。経営者や政治家を顧客に抱えるスピーチライターの蔭山洋介氏は、プロの視点からどう見たのか?

 史上まれに見るダメダメ謝罪会見だった――。

 森会長は3日のJOC評議員会での女性蔑視とも取れる発言を批判され、海外でも波紋を呼んだ。そのため4日に会見したものの、記者との質疑応答でイライラを募らせると、あろうことか質問者に逆ギレ。さらには逆質問まで飛び出す、“謝罪”会見になってしまったのだ。

 スピーチライターの蔭山氏はこの会見について「0点。これ以上ひどい謝罪会見はなかなかない」として、こう話す。

「逆ギレ、逆質問、これらは謝罪会見ではあり得ない。ましてやイライラしている様子を見せるのはもってのほか。本人は謝罪の必要性を感じてなくて、周りに騒がれてやっている感が出てしまっていた。いつも嫌われ役を引き受けているので、こういう場に慣れているせいか、事前に対策をした感じも見られなかった」

 これまで森会長は首相時代の「神の国発言」や、ソチ五輪のフィギュアスケートに出場した浅田真央に対する「大事な時に必ず転ぶ」など、何度となく失言を繰り返してきたのは誰もが知るところ。そのたびに猛バッシングを受けてきたが、慣れっこになったせいか、謝罪会見に臨むにあたって油断が生じ、記者の質問に対して怒りの感情をコントロールできなかったのかもしれない。

 しかし、今回の謝罪会見、プロの目から見ればもっと大きな問題点があるという。そもそも森会長は何を問題視されての謝罪会見だったか、本質を理解できていたのかという点だ。

「何が問題視され、何を謝罪すべきなのか、この認識は謝罪会見の基本中の基本。今回、森会長が問題視されたのは女性蔑視はいけないという『認識』を持っているかであって、どう『表現』したかではない。それにもかかわらず、冒頭で『五輪精神に反する不適切な表現であった』と『表現』について謝罪したのはズレていたと言わざるを得ず、これでは謝罪しても納得を得られない」(蔭山氏)

 森会長は、いうなれば東京五輪の顔だ。日本の代表として世界中から注目される。その森会長が女性蔑視発言をしたことで、国民からその資質を問われて批判された。その本質を認識できていたのか? イライラして逆ギレまでする姿からは、そうした疑問が湧いてくるのも無理はないだろう。

 最後に蔭山氏は「記者が相手の本音を引き出すために、あれやこれやと仕掛けてくるのは当たり前。それに対して怒ってしまった森会長は完敗。事前にほんの20~30分でも対策をしていれば、もっと違った謝罪会見になったかもしれない」と話した。

 ネットでも「やっぱり老害」「謝罪どころか逆ギレとは笑える」などネガティブな書き込みがあふれ、海外でも批判が巻き起こっている今回の女性蔑視発言。国民の怒りの声が森会長に響くことはあるのか――。