米アマゾンの創業者で世界長者番付1位のジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO=57)が2日、退任して後任に同職を譲り、取締役会長に昇格することが発表された。ベゾス氏自ら決定した突然のトップ人事の背景には、イーロン・マスク氏(49)への対抗心があると業界関係者は指摘する。

 米アマゾン・ドット・コムは同日、ベゾス氏が2021年7~9月期に退任し、クラウド部門責任者アンディ・ジャシー氏がCEOに就任すると発表した。

 ベゾス氏は同社社員に対し、「企業全体の運営は包括的で精神的に疲弊するものだ」とし、今後は自分がやりたいプロジェクトに多くの時間を割きたいと率直に説明した。

 その〝やりたいこと〟とは、自身が立ち上げたホームレスを支援する慈善事業「デイ・ワン・ファンド」や、気候変動対策のため私財から1兆円以上を投じた環境基金「アース・ファンド」などフィランソロピー活動だ。また、13年に買収した米紙ワシントン・ポストの経営にも力を注ぐとしている。

 米テクノロジーニュースサイト「GeekWire」によると、そんな中でもベゾス氏が人生をかけて情熱を燃やすのが00年に設立した宇宙開発企業「ブルーオリジン」社だ。

 同社は宇宙旅行を手始めに、最終的に100万人単位が宇宙で生活できるような技術開発を目指すというが、採算ベースからは程遠いのが現状だ。そのため、大型ロケットなどの研究開発資金はベゾス氏が自分のアマゾン株を売却し、毎年約1000億円を捻出してきたとされる。

 しかも、近年はマスク氏が02年に起業したライバルの「スペースX」社にメディアの注目が集まり、ブルーオリジンは後塵を拝しているのだ。

 更に、ベゾス氏は17年から連続で米経済誌「フォーブス」による世界長者番付トップだったが、今年の年始早々、マスク氏に1位の座を奪われたのだ。

 ブルームバーグ・ビリオネア指数の番付によると、マスク氏がCEOを務める米電気自動車メーカー「テスラ」社の株価が年明けから上昇。それにより、同氏の純資産額が1月7日時点で1885億ドル(約19兆8000億円)となり、ベゾス氏の資産を約15億ドル(約1575億円)上回ったのだ。

 その後、株価の変動で番付トップが入れ替わる2人は、今や世界トップのライバル同士。GeekWireは、ベゾス氏がアマゾンCEOを離れることで、ブルーオリジンを立て直しに着手することは確実だとしている。今度、マスク氏のスペースXとの競争が本格化することは間違いない。