東京都の31日の新型コロナウイルスの新規感染者数は633人で、3日連続で1000人を下回った。しかし、いまだ医療体制は逼迫しており、政府は7日に期限を迎える11都府県への緊急事態宣言について、東京都などで延長する見通し。そんななか、幸いにもステージ4を脱し、解除されそうな栃木県(同16人)では、宇都宮市の個人飲食店オーナーからまさかの延長を望む声が上がっている。

 政府は7日に期限を迎える緊急事態宣言を1か月延長することで検討に入った。

 東京都をはじめ、全国的に新規感染者数は落ち着きを見せ始めているが、解除基準とされる感染状況の指標であるステージ3(病床使用率20~49%など6指標)に下がっていない指標が複数ある都府県が多く、国民も「延長やむなし」の声が大勢だ。

 そんななか、注目されているのが、緊急事態宣言で夜8時までの時短営業要請に従っている飲食店に対して支給される協力金がどうなるかだ。というのも、宣言当初から、1店舗あたり一律で1日6万円という支給方法が売り上げ、規模、家賃などを反映しておらず「不公平だ」との批判が上がっていたからだ。

 ある飲食業コンサルタントは「個人経営の飲食店のなかには協力金が1日の売り上げを大きく超えてウハウハという人がいるのは事実。逆に大規模店や高級店、テナント料が高い好立地の飲食店は『売り上げ実態を反映していないのはおかしい』と不満を漏らす人が多い」と話す。

 国民からも一部の飲食店が〝儲かる〟仕組みに怒りの声が上がっているが、加藤勝信官房長官は1月29日、「協力金の支給の迅速さや公平感などの観点から、どのような在り方が考えられるかは、感染状況や事業者への要請内容なども総合的に勘案しながら検討を深めていくべき課題」と早急な見直しには否定的な認識を示した。

 このままいけば、緊急事態宣言が延長されても、協力金の支給体制は変わらない可能性が高いが、7日の期限で解除されるとみられる栃木県からは悲痛な声が上がっている。

「緊急事態宣言を解除しないでほしい」と話す宇都宮市内のバーの経営者は理由をこう語る。

「うちは1日の売り上げが通常3万円くらいなので、時短営業の協力金6万円はもらいすぎと言われたら否定できない。ただ、協力金でウハウハと言われるのは違う。昨年は営業できない時期もあり、最大で9割落ち込んだこともあった。3週間ばかり、1日6万円の協力金をもらったところで全然補填できない」

 世間では売り上げよりも多い協力金をもらう飲食店に対して〝ボーナスステージ〟などとやゆする声もあるが、実際には昨年の減収分の補填にもならない店も少なくない。

 特に宇都宮といえば〝ギョーザの街〟として有名だが、夜は名うてのバーテンダーが腕を競う〝カクテルの街〟としての顔も持つ。それだけに夜の営業が厳しく規制されるコロナ禍は、宇都宮のバー経営者たちにとって大打撃だった。

 前出のバー経営者は「自粛ばかりが先行して実態に見合った補償がないのが問題。それならば、少しでも長く緊急事態宣言を続けてもらって、1日6万円の協力金をもらいたいというのが宇都宮のバー経営者たちの本音です」と明かす。

 緊急事態宣言の解除については政府が2日にも諮問委員会を開き、解除する都府県のほか、離島で感染拡大が続く沖縄県などを対象に追加するのかも判断する。

 延長を決めた場合は、営業時間短縮に協力する飲食店への新たな支援策を打ち出す案も与党内で浮上しており、飲食店関係者からの不満がくみ取られる可能性もある。