国会や霞が関がある日本中枢エリアの千代田区で、区長選(31日投開票)が24日告示され、区政の混乱同様、選挙でも有権者が混乱しかねない状況になっている。

 同区は石川雅己区長(79)がマンション優先購入の便宜を受けた疑惑で百条委員会にかけられ、そのさなかに石川氏が議会解散を通告する騒動があった。結局、石川区長は6期目をあきらめたが、後任を決める区長選が大混乱となっている。

 石川氏を議会で追及していた自民党の早尾恭一元区議(59)が立候補を早々に表明するや、都民ファーストの会の樋口高顕都議(38)が告示直前に立候補を宣言。また日本維新の会推薦の五十嵐朝青氏(45)、会社員の宮田朋輝氏(26)の4人が立った。同区は“都議会のドン”といわれる自民党の内田茂元都議(81)の地盤。前回の区長選では、小池百合子都知事(68)の後ろ盾を得た石川氏が、内田氏の推す与謝野信氏(45)を退けた。内田氏と小池氏は因縁関係といわれていたが、今回の区長選前に「手打ちした」との報道が流れた。

「内田氏が樋口氏を支援する代わりに夏の都議選で、都民Fの候補を出さないことで、小池氏と裏取引したというんです。都民Fの候補が出なければ、内田氏の娘婿の内田直之区議が当選できるという算段です」(自民党関係者)

 あまりに乱暴ともいえる手法だが、同関係者は「一時は内田氏に忖度し、早尾氏を下げるべきとの声もあったが、推薦発表し、支援態勢をつくってしまった手前、もう引き下がれなかった。事実上の分裂選挙といっていいでしょう」と困惑する。

 一方、内田氏は樋口氏の支援を表明しているワケではなく、早尾氏が候補者として適任なのかの疑義を口にしているだけ。小池氏が息子のように寵愛する樋口氏を区長候補に誘い出したうえで、最後は手のひら返しで追い落とす戦略の可能性もあり、周囲も内田氏の真意を図りかねている。