多くのバイオレンス映画を手掛ける阪元裕吾監督のオリジナル映画「ある用務員」(主演・福士誠治)が、29日に公開される。ヒロインを務めるのは、新進女優として注目を浴びる芋生悠(いもう・はるか=23)。放送中のボートレース新CMでは、プロを目指す若きボートレーサーを演じ、知名度急上昇中だ。いまだ新型コロナに翻弄される映画界で、芋生が女優としての“苦悩”と“映画を愛する人々の思い”を本紙に明かした。

 ――裏社会の物語だ

 芋生 本当に未知の世界でした。目の前で殺し合いが始まったらどういう気持ちになるんだろうと、想像ができない部分もあって(苦笑い)。でも、監督さんから「ショックすぎて思考が停止することから始まる」と教えていただいて、さすがバイオレンスを撮られている監督さんだな、と思いました。頭だけでは状況がのみ込みきれなかったけど、逆にリアルだからと、感じたままに演じました。

 ――目の前で激しいアクションが繰り広げられますが、主演の福士さんに守られる役だった

 芋生 役的には足がすくんで、おびえて見るんですけど…。(本音では)戦ってみたいなと思って見てました(笑い)。空手を習ってきて、バック転もできるんです。だからアクションもやってみたいですし、殺陣も。今回は守られる側でしたけど、守る側も演じてみたい! 女性のヒーロー作品を見ていたので、次は戦いたいですね。

 ――コロナ禍で映画界は大変な状況が続く。舞台あいさつが無観客になることも

 芋生 作品の感想を実際に聞く機会がないので、どんな反応をしたのかも分からない。不安で夜にうなされることもある(苦笑い)。人の顔を見ることができなかったり、声が聞けないとこんなにも不安になるんだなって。だからこそ「第一に健康で、一つの作品を頑張って作りましょう!」という姿が本当に尊いというか。いつまた奪われるか分からない。誠実にみんなが向き合っている感じがします。

 ――改めて女優業を考えるきっかけにも

 芋生 そうですね。演出家さん、照明さん、音声さんなどいろいろな人の支えがないと、成り立たない職業だなって。あと映画はやっぱり劇場での公開に向けて音を調整したりしているから、その目的が果たされない悲しさがある。みんな映画が好きな人たちだから「どうにか頑張らなきゃね」と、いろいろと仕組みから見つめ直している感じはしますね。

 ――映画館が好きなんですね

 芋生 結局、そこにたどり着くというか。私は映画館に救われてきた人間なので、恩返しできたらなと思って。配信とかもありますけど、何周か回って“映画館に行くのが一番いい”となっていけばいいなと思います。ちゃんといいものを作っていくことが大事なんじゃないかなって。

 ――昨年、ヒロインを務めた映画「ソワレ」では、いくつかの映画賞で「新人賞」にノミネートされるなど充実した1年となった

 芋生 そういう場所に立てたことの奇跡を感じます。コロナ禍で当たり前じゃないですし、人間力を鍛えられた年でした。人に会えないから、自分と向き合うしかない(苦笑い)。自分より役が大事なところがあって、知らず知らずにボロボロになっていたこともあったけど、自分にちょっと優しくしようかなと思いました。自分の力で自分を満たす方法をようやく知ることができましたね。

◆映画のあらすじ 元暴力団員の父を幼いころに殺され、自身も殺し屋に成長した深見(福士)。父の組兄弟の娘・真島唯(芋生)の見張りを務めるため、唯が通う高校の用務員として潜り込むが、暴力団の抗争が勃発してしまう。狙われた唯を守るべく、深見は命がけの戦いに身を投じる。

 ☆いもう・はるか 1997年12月18日生まれ、熊本県出身。2014年、第3回「JUNONプロデュース ガールズコンテスト」でファイナリストに選出され、15年から女優業をスタート。昨年は豊原功補&小泉今日子の第1回プロデュース映画「ソワレ」(外山文治監督)で村上虹郎とともに主演。大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」などドラマへの出演も多数。5月には映画「HOKUSAI」公開も控える。