1980~90年代に心霊番組での霊視やバラエティー番組などで人気だった僧侶・織田無道さんが9日に死去していたことがわかった。68歳。2018年に直腸などのがんを宣告され、闘病中だった。

 全盛期には週5本のテレビ番組のレギュラーを持ち、プライベートではランボルギーニを乗り回した。〝墓地乗っ取り事件〟では最高裁まで争い、有罪判決を受けるなど波瀾万丈の人生だった。

 80年代に心霊番組ブームの波に乗るようにテレビ界に登場すると、水晶玉による霊視や、除霊の際の鬼気迫る手法が注目され、引っ張りだことなった。「酒も焼き肉も女性も大好き」という僧侶らしからぬ私生活も公開し、タレントとしても数多くの番組に出演した。

 メディアから姿を消したのは2002年9月、東京都内の墓地をめぐり、宗教法人の登記を無断で変更した〝墓地乗っ取り事件〟で逮捕されたことが原因だった。織田さんは最高裁まで争ったが、04年に懲役2年執行猶予4年の有罪判決が確定した。

 06年の本紙インタビューでは「(事件で)ずいぶん冷たい目を向けられ、週5本あったテレビ出演もなくなったけど、勉強になりましたよ。周りで調子のいいことを言っていた人間は離れていった。でも檀家さんや家族は理解してくれたから、ありがたいこと」と振り返っていた。

 一方で、心底しょんぼりしたシーンも。故松田優作さん主演映画「蘇る金狼」(79年)に貸し出したランボルギーニが、事件直後、夫人に売り払われたからだった。

「こんなものを持ってるから誤解されるのよ!」と激怒されたというが、織田さんは「今ごろ、どこにあるのかな~」と肩を落としていた。

 柔道2段、空手3段の武道家として「僧兵武術道総本部総帥・総大将」をしていたこともあり「世界の僧兵には殺すか殺されるかの兵隊がゾロゾロいる。世界の格闘技選手や軍隊の現役兵士などと戦う場を作りたい」と夢も語っていた。

 突飛な言動から、仏教界からは異端児扱いされたが、反逆精神は持ち続けた。「僧侶にあるまじきという批判は常について回るけど、仏教の教え通り、ありのままにやっていく。総本山なんかクソ食らえですよ。平気で『みんな極楽浄土にたどり着きましたよ』とウソをつく葬式坊主だけだから」

 私生活を含め、作られたキャラクターのようにも思えたが、織田さん自身は欲望にも素直で、他人の目を気にせず自由に振る舞う、純粋さがあった。