米製薬会社大手のファイザーが、臨床試験中の新型コロナウイルスワクチンについて「90%以上の有効性を示した」と発表したことで〝コロナ不況〟に苦しむ世界に光明が見えてきた。株価も上昇してきた日本国内だが、北海道の感染者が10日も166人となり、6日連続で100人を超えてしまっている。この状況から、北海道をGoToトラベルから除外する可能性もささやかれており、これが逆に〝密〟を生み出す可能性が出ているという。

 全世界に歴史的な〝ファイザー砲〟という朗報が駆けめぐった一方で、日本国内の感染状況はウイルスが活性化するといわれる冬が近づくにつれて悪化しつつある。特に北海道の状況は深刻だ。

 札幌の繁華街すすきので10月に発生したクラスターをきっかけに感染者が急増。9日には道内で過去最多の200人が感染するなど、10日までに6日連続で感染者が100人を超えた。

 これを受け、加藤勝信官房長官は「ある都道府県が(感染急増の)ステージ3相当と判断された場合には、感染リスクを総合的に考慮して当該都道府県を(GoToトラベルから)除外することも検討していただきたいという提言を(分科会から)いただいている」と、北海道除外の可能性に言及。

 この発言で北海道への旅行を計画している人たちに激震が走った。北海道がGoToトラベルから除外されるのではないか、という見方が一気に広がったからだ。

「加藤官房長官の発言で、すでにGoToトラベルを利用して予約している客から『北海道が除外されたら支払額はどうなるんだ?』という問い合わせが一気に増えました。一方、GoToを利用した北海道旅行の問い合わせが急増しています。除外される前に予約して滑り込もうという考えのようですが、道外から人を入れないための除外が、皮肉にも逆に北海道を観光客で〝密〟にしそうな勢いです」(都内の旅行業者)

 菅首相は10日、北海道の除外に否定的な見解を示し、当の鈴木直道北海道知事も「除外を望まない」と発言。加藤官房長官も「除外を検討する状況にない」と否定的な考えを示し、前日の発言の火消しに躍起だが、すでに後の祭りだ。

 ネット上では政府の対応に批判の声が殺到し、中には「北海道を除外したら、今度は沖縄に人が殺到して感染拡大する」という声も上がっている。北海道除外の可能性が浮上したことで他県にも飛び火する勢いだ。

 一方で、コロナ終息に光明も見えてきた。米ジョンズ・ホプキンス大学によると、新型コロナウイルス感染者は世界中で累計5000万人。世界経済が過去に類を見ないレベルで冷え込んだが、ファイザーが独ビオンテックと共同開発している新型コロナウイルスワクチンについて「最終段階の治験において90%以上の参加者に効果が確認された」と発表したことで、世界の経済界や株式市場関係者から歓喜の声が上がっている。

 米大統領選のご祝儀相場も相まって、日経平均は週明けから連日バブル崩壊後の最高値を更新し、一時2万5000円台をつければ、米ダウ平均も大幅に値を上げるなど、各国の株式市場が敏感に反応した。

 ファイザーは年内に5000万回分、来年には億回分を製造する計画で、今月中にも緊急使用許可を申請する。日本も来年6月までに1億2000万回分を調達することで合意済みだ。

 製薬関係者は「インフルエンザワクチンが約60%の予防有効性を示すといわれる中、ファイザーが開発している新型コロナウイルスワクチンが90%以上の予防有効性を示した。かなり有望といえる」と話す。

 ただし、免疫効果を得るには1人2回接種する必要があり、日本が調達する1億2000万回分では、人口の約半分にあたる6000万人分しかない。すべての国民が接種することはできない。また、マイナス80度以下で保存する必要があるため、保存施設の確保も課題となりそうだ。

 予防有効性90%の〝救世主ワクチン〟だが、日本で接種できるようになるのは来春以降とみられている。それまではなんとか感染拡大防止と経済活動を両立させるしかない。