コロナ禍によりハリウッドも大打撃を受けたが、ブロードウェーは輪をかけて悲惨だ。15日に発表された演劇とミュージカルの舞台芸術に贈られる米トニー賞ノミネーションは前代未聞の事態となった。

 米紙ワシントン・ポストは、「2020年トニー賞候補発表は過去一番の奇天烈さ」との見出しで速報。同賞全25部門に対し、候補対象はわずか18作品。ミュージカル主演男優賞にいたっては、ノミネートが1人という〝無投票当選〟の異常事態となった。

 トニー賞は通常、前年5月からの1年間に上演された作品が候補対象だった。だが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、ニューヨークの劇場が3月中旬に全て閉鎖された。本来なら2月後半から3月にかけて新作や話題作が多く上演されるのだが、それも全て中止に。

 そのため、同賞主催者は候補対象を2月19日までに上演された作品に絞った。つまり、トニー賞候補になるはずだった作品が大幅に減ったというわけだ。

 たった一人のミュージカル主演男優賞候補となったのは「ムーラン・ルージュ」でクリスチャン役を演じたアーロン・トベイト(36)。

「ムーラン・ルージュ」はミュージカル作品賞にもノミネートされたが、ライバルはロックミュージカル「ジャグド・リトル・ピル」と伝説の歌手をたたえた「ティナ/ティナ・ターナー・ミュージカル」のわずか2本。演劇リバイバル作品賞も候補は3作品のみとなった。

 同紙は今年は〝割引のトニー賞〟と表現。1947年に始まった同賞の歴史にとっても異例の年となった。発表・授賞式はオンラインで年内に行われる予定だという。

 一方、ブロードウェーの劇場連盟は先日、劇場閉鎖を少なくとも来年5月末まで延長すると発表した。ニューヨーク観光の目玉となってきたブロードウェーだけに、エンターテインメントや関連業界にとって大きな痛手となっている。