北欧の島国、アイスランド北東部の観光名所・デティフォスの滝で、崖状の岩場を動き回る真っ黒いナゾの生物(?)が偶然、撮影された。このナゾの生物は、国民の半数以上がその存在を信じるエルフ(妖精)ではないかと、アイスランドで大きな話題になったという。本紙も問題の動画を検証してみたところ…。

「ドローンも鳥も、ビニール袋も飛んでなかった。これ何?」

 今年の8月13日、その動画をインスタグラムに投稿したのは、地元女性ラッパーのヴィグディス・オスク・ハルダルドッティルさんだ。

 ズームしながら滝を15秒ほど撮った動画だが、確かに手前の岩の後ろで、ゴブリンや鬼を思わせるような真っ黒な人型の物体が左右にちょこちょこ動いている。レイ・ハリーハウゼンの特撮映画のストップモーションアニメのようにギクシャクした動きで、人間のなめらかな動きではない。フレームアウト寸前には、角ばった頭をもたげて、岩に手を掛け空を見上げているようにも見える。

 地元紙の取材に応じたヴィグディスさんによると、撮影したのは恋人と一緒に旅行している途中で、インスタ投稿の数日前だった。撮影した時は分からなかったが、旅から帰って動画を見て初めて“異変”に気付いたという。

「そこで何か、超自然的なことが起きてると言うつもりはないけど、面白いから動画の公開を決めた」

 決して意図的に、映像を加工したわけではないという。

 なんでも撮影当時、近くの展望台には10人ほど人がいて、ヴィグディスさんたちは滝に近付くために移動した際、この動画を撮ったという。

「私たちの前には誰もいなかった。険しい崖しかないから、誰もそんなとこ行けない」と主張する本人は、「黒い妖精か、悪魔の一種か…」と推測している。

 アイスランドでエルフは「アウルヴル(妖精)」「フルドフォルク(隠れた人々)」と呼ばれ、なんと国民の半数以上がその存在を信じているとか。デティフォスの滝からそう遠くない、馬のヒヅメのような形をしたアウスビルギ渓谷には「今もフルドフォルクが隠れて住んでいる」という言い伝えが残っている。

 日本で言うなら、ジブリ映画に出てくる「まっくろくろすけ」といったところか?

 このインスタ投稿はその後、大反響を呼んだ。世界中から「ゴブリン(ヨーロッパの伝説の生物)だ!」「ゴジラだよ」「いや、地底人だ」などと、“夢のある”コメントが寄せられた。

 ただその一方で、「黒い鳥でしょ」「黒い枝が吹き飛ばされてるように見える」などと、“夢のない”意見も寄せられている。“夢のない”意見の中で、有力なのがカメラの三脚説だ。その根拠は、黒い物体がフレームアウトした後、画面下部にチラッと映る、黒い髪をした人の後頭部だ。

 投稿時、ヴィグディスさんは「まるで映画『リング』の女の子(貞子)みたい」と指摘しているが、この人物が岩の後ろにセットした三脚を動かしていて、三脚の頭、つまりカメラとのジョイント部分だけ岩陰からチラチラ見えていたのでは?というのだ。ある人は、その黒い物体が「角ばっていて、生物的な形状じゃない」ことも根拠に挙げている。

 デティフォスの滝は幅100メートル、落差44メートルと規模こそさほど大きいわけではないが、ヨーロッパ最大級の滝として知られる。リドリー・スコット監督のSF映画「プロメテウス」(2012年)のオープニングもここで撮影された。

 ヴィグディスさんは滝のド迫力に気をとられ、前方にいる人に気付かなかった!?