女優・千眼美子(25)が本紙のインタビューに応じ、〝役者論〟を熱く語った。16日に公開される映画「夜明けを信じて。」でヒロインを演じている千眼。女優として数多くの映画、ドラマに出演してきた千眼に「これまでの女優人生の中で印象に残った現場」を聞くと、綾野剛(38)との現場だったという。その理由は――。


 千眼は同作で主人公の「一条悟」に思いを寄せる女性の「立花美穂」を演じた。この一条役は映画初主演となる俳優・田中宏明が演じている。

 撮影では田中の落ち着きぶりに驚いたという。「もうちょっと緊張してガチガチなのかなと思っていたんですが、現場に入ると淡々と、どっしりしていて。自分の方がキャリアも上だし、私がリードして…なんて思ってたんですけど(笑い)。初日のワンカット目で分かったので、主演の方にお任せしようと思いました」と振り返った。

 撮影現場では、役者同士にしか感じることのできない〝熱量〟があるそうだ。

「お芝居の内容そのものではないんですね。どのくらいの覚悟というか、どのくらい突き詰めてやってきたのかっていうのは、その場で分かるんです。例えば『自分の方が真剣さが足りない』と思ったら、もっとエンジンかけてやらないといけないなという気持ちになるんですよ」(千眼)

 そんな千眼にこれまでの撮影で印象に残っている現場を聞くと「綾野剛さんの現場ですね。『コウノドリ』というドラマの1回目に、ゲストで出させていただいたんですが、その時のことがすごく印象に残ってます」と明かす。

 ドラマは産科医療をテーマにした漫画が原作で、綾野演じるドクターの鴻鳥サクラを中心に物語が展開していった。当時、千眼は未受診妊婦の役で出演した。

「漫画喫茶で出産するというシビアな役でした。社会的な意義のある役で、自分でも集中して現場に入れたと思います」(千眼)

 その現場で感じたことをこう明かす。

「綾野さんは正直、『すげー!』と思いました。役を貫いている、追求しきっているっていうだけじゃなくて、現場全体のことを見ている。声掛けとか気遣いが、すごくジェントルマンなんです。やっぱり主演をたくさんやられている方は、そういうところの意識も違うんだろうな」

 千眼の泣くシーンでは、その気遣いがすごく表れたという。

「一点を見つめて泣くシーンだったんですけど、遠くに次の撮影の準備をしているスタッフさんがいたんですね。綾野さんはそれにすぐに気づいて『今、大事なシーンだから、目線から外れてくれる!?』とスタッフさんに声掛けしてくれました。自分も主演をやるようになったら、こういう〝はからい〟ができる大人になりたいなと思いましたね」と千眼は尊敬の念を示した。

 一方で「全体を見るのではなく、自分のことだけに集中して100点以上の演技をすることもアリだと思うんです。一番は(いい作品を作るために)与えられた役割を果たすこと。そういうタイプの役者さんが主演になった時は、周囲がサポートすればいいと思います。私も現場によって変わります」と熱弁する。

 最後には「こんな真面目な話をしちゃって大丈夫ですか?」と照れたが、そのプロ意識は相当なものだった。