あまりにも不平等だ! 昨年4月の〝池袋暴走事故〟で自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(89)が8日、東京地裁で行われた初公判で無罪を主張した。事故当初から逮捕されない飯塚被告に厳しい声が上がっていたが、その上で無罪を主張したため、ネット上ではバッシングの嵐が吹き荒れている。しかも専門家からは「もし無罪なら、山口達也も無罪になる」との声も上がっている――。

 起訴状によると飯塚被告は2019年4月19日、東京都豊島区の道路で車を運転中、アクセルをブレーキと間違えて踏み続け、時速約60キロから約96キロに急加速。自転車で青信号の横断歩道を渡っていた松永真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(同3)をはねて死亡させたほか、通行人ら9人を負傷させた。

 怒声が飛ぶ中、タクシーで東京地裁入りした飯塚被告は、初公判で遺族の松永拓也さん(34)を見て「ご心痛を思うと言葉がございません。心からおわび申し上げます」と謝罪した。

 しかし、起訴内容を問われると「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している。車に何らかの異常が発生して暴走した」と否認し、弁護側は過失致死傷は成立しないと主張した。

 検察によれば、車は1か月前の点検でブレーキやアクセルの機能に異常はなく、「後続車の運転手はブレーキランプを見ておらず、ブレーキが踏まれた記録も残っていない」としており、車の不具合を主張するには無理がある状況だ。

 そもそも飯塚被告は事故前から、医師に車の運転を控えるよう言われていたとされ、事故後の事情聴取には「接触事故を起こしパニック状態になった」、「アクセルとブレーキを踏み間違えた可能性もある」などと供述。自ら操作ミスの可能性を認めていた。

 にもかかわらず、「事故原因は車だ!」と言わんばかりに無罪を主張したことで、ネット上はバッシングの嵐。「こんなのがまかり通ったら、これからの事故は全部車のせいにすればよくなる」など怒りの声があふれ、デヴィ夫人も「恐るべき厚顔無恥な〝上級国民〟飯塚幸三被告」とツイートするなど、ツイッターのトレンド上位には飯塚被告関連のワードが多数ランクインした。

 飯塚被告に批判が集中する一方で、思わぬ形でクローズアップされたのが「TOKIO」の山口達也元メンバー(48)だ。

 山口元メンバーは先月22日、都内でバイクを運転中に信号待ちの車に追突。呼気検査で基準値を大幅に超える0・7ミリグラムのアルコールが検知されて道路交通法違反(酒気帯び運転)で警視庁に現行犯逮捕された。

 その後、東京地検が道交法違反では異例となる勾留請求(東京地裁が退けた)。釈放後の深夜に警視庁の家宅捜索を受ける厳しい扱いだった。今後も在宅のまま任意で捜査が行われるもようで、まだ、起訴→有罪の可能性も残されている。

 ネット上では逮捕もされず在宅起訴で済んだ飯塚被告との対比論が噴出している。「飯塚被告は元高級官僚で国に守られている〝上級国民〟」とする見方とともに、「山口達也との対応が違いすぎる」といった声が多数上がったのだ。

 いったい、どうして2人の扱いに〝格差〟が生まれてしまったのか?

 元衆院議員で弁護士の横粂勝仁氏はこう話す。「捜査関係者は邪推にすぎないと言っているようですが、一般的にほかの類似の事故で逮捕される人たちと比べると、飯塚被告の扱いは平等性を欠いているように見えます。事故当初、ケガで入院のため逮捕しなかったのは理解できますが、80歳だろうと90歳だろうとケガが治れば逮捕できるんです。霞が関の省庁をまたいだ現役官僚やOBの〝組織〟があると聞いたことがありますが、飯塚被告がそのネットワークの中で守られた可能性は十分あり得る」

 あまりの〝格差〟の大きさにネット上では「飯塚被告が人をひき殺して無罪を主張するなら山口達也は無罪だ」といった声まで上がっているが、横粂氏は「飯塚被告の主張はまかり通らないと思いますが、これまでの状況から飯塚被告が無罪であれば、山口さんも無罪でなければ釣り合わないことになってしまう」と、両者の間の不当な〝格差〟を指摘した。

 逮捕されない上に無罪を主張…。遺族の気持ちを考えると、何ともいたたまれない――。